ときどき日記 2006/10

2006年10月31日 火曜日

『夜明け前より瑠璃色な』04.「戦う!お姫様」

 お姫様の魅力を描き出すエピソード…だったのかと思うけど、うーん、「ゴキブリが苦手」も「しかしメイド少女を見捨てない」も構わないが、「他人様の書斎で銃を乱射し、最終的にはミサイルを撃ち込んで焼き払う錯乱ぶり」を可愛いなどと感じるのは難しい。
 男の子が、浮気者だったり乱暴だったりする「加害者」キャラではなく、「被害者」タイプのため、フィーナが酷い目に遭わせることでカタルシスなど生じず、悲惨、というような印象すら残してしまう。
また、破壊された書斎が主人公の父親のものであり、しかも彼は父を敬愛していて、その思い出が詰まった場所であると知っていながら、なお破壊を選んでしまう彼女の行動からは、マイナスのイメージしか受け取れず。
 コミカルに描けば何をしても許される、という訳じゃないんだけどな。

 書斎に出現したモノを、月面のみに棲息する恐ろしい害獣に設定し、その繁殖力の高さから ここで被害を出してでも撃滅しないと、より大きな損害を出してしまう、という事にしてフィーナの行動を正当化するとか。
ゴキブリに関連するフィーナの逆上しても仕方ないぐらい悲惨な過去を紹介する、あるいは書斎を「家族が前々から迷惑に感じていたので消し去ってもらえたのが有り難い場所」に変えるなど、ストーリー的なフォローは いくらでも効いたと思う。

 せめて、前半と後半のエピソードを入れ替え、前半の書斎破壊で反省し、無茶を控えようと決心したフィーナが、子犬の危機を前に また我を忘れて行動する…という流れにした方が良かったような。
そうすれば、「発作的な行動を見せる考え無しの お姫様だけれど、その本質は穢れ無い」と印象づけることが出来た…かも知れない。

 次回は、サービス編で水着話のようだけど、予告だと また、かなり作画が崩れているように見え、不安。



『ギャラクシーエンジェる〜ん』05.「和解!大人のアルコーる〜ん」

 リリィとアニスの関係を彫り込む話。
真剣に見ている、とは言えない鑑賞態度のせいか、この二人の名前を覚えていなかったし、仲が悪い、という基本設定にしても、そういえばオープニングで睨み合ってるから そうだっけ、という程度の認識。
 そういう いい加減な視聴者にも向け、設定を印象づけておこうというエピソードなのか。

 十年後、成長した(姿は変わらず)二人が かつての不仲ぶりを思い出す…という構成だったが、人格的にまるで熟成していないのは初見から明らかなため、互いの会話が最終的に激突方向へ向かうことは、誰にでもすぐ予想が付いてしまう。
昇進を控えたリリィは監察官に監視されているとか、アニスは婚約者と一緒に来ているとか、ブチ切れられない理由を きっちり設けた方が、緊張感や危うさを より表現できたかも。
 嘘の過去を言い合って相手を貶めようという展開は、本来は面白いものだと思うんだけど、テンポが悪いせいかエスカレートぶりが生ぬるいせいか、笑いにまで繋がらない。
旧作なら、「そして彼女達は死んでしまったのでした」というような現状と矛盾する思い出が入ったり、「最終的に宇宙が消滅する」といった投げっぱなしラストにするなど、もっと暴走した内容にしただろう。
 割合と常識的な、大人しい内容になっており、見る者の予想を超えて行かない所が、旧作との対比を取り払い独立した作品として見ても、物足りない印象を残してしまう要因。

 スタッフは、三十分という放送時間を持て余しているように思える。
 今回の内容でも、せめて時間が十五分なら、まだしも不満薄く見終えられたかも知れないのに。



『コードギアス 反逆のルルーシュ』04.「その 名 は ゼロ」

 スザクを救うべく、行動を開始するルルーシュ。
 軍事法廷にかけられるスザク、というのに無理を感じないでもないが、公平でも有能でもないブリタニア軍の所業だから良いとして。
 妙なマスクを被り、レジスタンスの前に姿を現すルルーシュに、笑ってしまう。
その登場のためだけに、一度しか使えない目の力を、いつかどこかで利用したくなるかも知れない多数の一般乗客相手に使ってしまう、思い切りの良さも可笑しい。
チマチマと弱気なことを考えていて大事が成せるか、と言われればその通りだし。

 救出作戦は、かなり運任せの、強引なものだった。
車両の偽装、そこに仕込んだ煙幕発生装置、飛び降りた自分達を受け止めるための仕掛けなど、きちんと計画されている部分もあるんだけど、仮面の目の部分だけがカシャッと開いて、無防備に姿を晒している敵指揮官を思い通りに操ってしまう、この余りにも便利な能力の使い方の前に、影が薄くなってしまって。
 この力の「不便さ」を どう規定していくか、が、物語を知的ゲーム方向に振る場合には重要になりそう。
 非情なルルーシュと生真面目熱血(?)スザクの対比、緊張感とルルーシュが見せる馬鹿馬鹿しいとも思える行動による緩和、この辺りに面白さのポイントを設定しているのなら、能力にそんなに厳しく枷を嵌める必要は無いだろう。

 てっきりルルーシュとスザクは、しばらく共闘する事になるのかと思ったが、命を賭けて軍事法廷に向かうスザクの決断に、驚かされた。
普通に考えるなら、まず生き残れる訳がない選択。
 レジスタンスが奪還を狙う人間である、という所に価値を認め、ブリタニアが処刑を思いとどまる、といった展開になるのかな。
ブリタニア側に知将が居るなら、スザクを上手く泳がせる事でレジスタンスを一網打尽に出来そうにも思うけど…あの軍はあんまり頭が良さそうにないので期待薄。


2006年10月30日 月曜日

『ウルトラマンメビウス』30.「約束の炎」

 ああ、やっぱりタロウの人間形態は出なかったか。
映画に登場しなかったこともあり、タロウとしての篠田三郎を見てみたかったんだけどなあ。

 強敵・侵略ロボットの恐るべき復元力の前に、タロウの必殺技ウルトラダイナマイトでさえ完全破壊には至らない。
ここ、炎のイメージと爆発の凄さでウルトラダイナマイトの破壊力が十分に表せており、満足。
 「怪獣もろとも自爆するウルトラマン」という度肝を抜かれるシーンに、感受性豊かな お子様達は きちんとトラウマを植え付けられただろうか?( ^_^ )

 仲間達を庇い、倒れるメビウス。
 「死」から彼を呼び戻したのは、その仲間達の熱い気持ちだった。
 チームメンバーとの関係を丁寧に描いてきた この作品ならではの展開で、ホロリと来てしまう。
 …ウルサイ文句を言えば、仲間達はただ叫ぶばかりではなく、「メビウスの気持ちは俺達が継いでやる!」とばかりに敵ロボットへの猛攻撃を行い、言葉より行動でメビウスの必要性を見せて欲しかった(メテオールも通じず、打つ手立ては尽きた状況だったが)。
 一作品としては感動的な盛り上がり方だけど、「ウルトラ・シリーズ」としては、メビウスと隊員達だけの関係性で閉じてしまわず、誰か一般人、出来れば子供を巻き込み、その気持ちをも受けることでの復活を見せ、「僕等のウルトラマン」である事も示して欲しかった。
勿論 隊員達は未完成な地球人の代表なのだし、前述したように彼らとメビウスの友情こそが この作品のテーマなのだろうから、何の問題がある訳でも無いが。
 まあ、ワガママとして。

 体に炎の紋章を刻み、パワーアップするメビウス。
それは仲間達との絆を表すものだけれど…タロウ教官の教えを受けたことと、壮絶なウルトラダイナマイトの炸裂を見た後だと、あの一瞬にタロウが燃え上がらせた「炎のパワー」を体の内側に封じ込める事で成し得た変身ではないか、という気も。
 「おだやかな心をもちながら はげしい怒りによって目覚めた伝説の戦士(スーパーサイヤ人)」に なったのだろうか。
形態変化は、もう「お約束」だけど。

 メビウスであるという正体を知られたリュウに対し、記憶操作でもするのかと思えば、逆に全隊員へと知らせてしまう思い切った展開で、驚いてしまう。
こんなに情報をオープンにしたウルトラマンも、例が無いなあ。
 これでもう、コッソリ隠れて変身しなくても良くなる。
 こうなっても特に彼らの関係が変わるとは思えないけど、全てを明かした後もなお物語が続く初のシリーズとして、これからどうなっていくのか、ドキドキしながら見守りたい。



 ううう、疲れつつも仕事が一段落。
やっぱり寝ないと人間、思考能力が激しく低下しますね。
 現在発売中の「コミックシグマ」、来月の「快楽天BEAST」の他に、11月9日発売になります増刊(新創刊?)「ちょいS」という雑誌にも原稿が掲載されます。
宜しければ、書店・コンビニなどで手にとってご確認頂けますと、嬉しいです(最近はシール閉じにより立ち読みが難しくなっておりますけれども)。


2006年10月26日 木曜日

 悲惨な お仕事スケジュールの綱渡りをしております。
うう、寝てないから頭が働かない。
 来週の月曜日ぐらいまで、更新は難しくなるかと。
 毎度のことですが、悪しからず、ご了承ください。


2006年10月22日 日曜日

『ウルトラマンメビウス』29.「別れの日」

 光の国への帰還を命じられ、GUYSの仲間達一人一人の「夢」を応援し、お守りを手渡して、別れを告げていくミライ。
地球や子供達、といった漠然とした対象ではなく、隊員相互の関係や絆を大事に描いてきたシリーズらしい決着の付け方。
こんなにきちんと「さようなら」に到る過程を描いたウルトラ作品も、珍しい。
 盛り上げて、爽やかに、最終回が迎えられ…
え?まだ続く?

 放送期間は1年?
だったら、まだシリーズの折り返し点を超えたばかり。
そこでこんな…もうリュウに正体を知らせてしまったし、もう終わるとしか思えない構成を取るとは。
 まあ、リュウの記憶なんか面倒になったら「一部消去しました」で構わないんだけど(笑)。
ウルトラ種族が、しかも大事にしてきた友人に そんな事するか、って疑問はあるが。

 巨大ロボットの出現。
メビウスでも殺されかねないほどの強敵だと聞いていたのだろう隊長が、珍しく呆然と(ミライや隊員達への心配と、地球を守る責務の葛藤?ロボットを知っている?)立ちつくす姿を見せ、緊張感を煽る。
 懸命に戦うが、敵の超回復力の前に、力尽き倒れるメビウス。
 そして、タロウ登場。
新人の技を遙かに超えるストリウム光線の破壊力により、先輩であり教官たる貫禄を見せつける。
いやあ、格好イイ。
 次回はウルトラダイナマイトも披露?

 メビウス、せっかく生死不明でエピソードが続いたんだから、次回予告に一切姿を現させないで来週までドキドキしてもらう、って選択もあったと思うが…年少の視聴者は本気で不安になり、泣いちゃうかも知れないので仕方ないかな( ^_^ )。
 地球に迫る脅威とは、何?誰?
シリーズ後半を通しての敵になるんだろうか。

 ところで…ヤプールはアレで出番終わり?
映画で大活躍したから もういいでしょ?と言われればそうなんだけど、もうちょっと凄味を見せつけて欲しかった!などとウダウダ思ってしまうのは、年寄りの過剰な思い入れ故。



『結界師』01.「右腕の傷」02.「良守と時音」

 原作は、途中から既読。

 唸るほど良い出来、という訳ではないが、悪い部分がなく、無難な出来。
日本テレビ、夜7時台の作品に求められるレベルはクリアしていると思う。
 作画面、一話目はかなり頑張って原作イメージを保っていたけれど、二話目になると もう「崩れている」…のではなく、「アニメとして描きやすい絵」にしている印象。
 動きは良いし、アクションも分かりやすく見せてくれて、「原作ファンが100点を付ける内容」とはいかないが、「及第点」は越えているだろう。

 本当に無難な作りなので、どうにもこう、書いても書かなくても構わないような事しか思い浮かばないなあ。
 取りあえず、自分が原作を読み始めた所にアニメが追いつくまで、視聴継続。


2006年10月21日 土曜日

『コードギアス 反逆のルルーシュ』03.「偽り の クラス メイト」

 目で直接 見つめるだけで、どんな相手も思うがままに操れるルルーシュの特殊能力。
余りにも便利すぎ、面白味がないなあ、と思っていたが…
 一人に一度だけしか使えない、という分かったような分からないような設定が明かされ、ルールを明確にすることで枷をはめ、その裏を掻く行動も考えられるようになって、面白くなって来た。

 「人を殺すことを何とも思わない主人公」「生殺与奪さえ操る特殊能力」「巨大な理想」「正体を隠すための二重人格的な行動」等々、『DEATH NOTE』がヒットした要因を実に良く分析してあると、感心。
原典になかった「ロボットアクション」をプラスした事が、吉と出るか凶と出るかは まだ不明確。
 ルルーシュに魅力を付加していくには、とにかく「頭が良い」所を見せる必要があり、そのためには…敵側を就学前児童 程度の思考能力しか持たないようにでも描かない限り、厳しいストーリーの練り込みが必須になる。
 今回見せた、他者とレコーダーを駆使して自分への疑いを逸らす計略は、まずまず。
このぐらいの小ネタを積み重ねていけば、かなりの所まで賢さを演出できるだろう。

 ルルーシュと競り合えるような知能を持ったライバルの出現が、待たれるところ。
そうなると、脚本家は塗炭の苦しみを味わう事になるが。
 どんな計略でも、頭など使わないロボット・パワーだけで打ち破ってしまうキャラとして、スザクをライバルの位置に据える方法もあろうけど、知的興奮度は低くなりそうだなあ。


2006年10月20日 金曜日

『009-1』03.「ハードボイルド Hard boild」

 スナイパー・エッグとミレーヌの死闘。
…実力が伯仲した戦いだからだろうけど、両者 撃っても撃っても当たらず、走ったり船に乗ったり泳いだりしている様子は、仲良しがバカンスで楽しんでいるようでもある。

 ポリシーに基づく美学に拘るエッグ。
それを受け入れているようで、実は全く相手にしていなかったミレーヌ。
 何というか、男が人生を掛けて集めた趣味の品物を、「ゴミ」としてアッサリ捨て去り、抗議の声には「ハア?ナニ言ってるの?私のお陰で部屋が片付いたんじゃない、お礼言って欲しいぐらいよ」と全く取り合わない奥さんみたいなもので。
こういう戦いにおいて、男が女に勝つのは不可能だと思うなあ。
 男は夢見るロマンチストで、女はあくまで現実を見据えるリアリスト。

 最後の決着で、「殺気」を読み取ろうとするエッグに対し、気配を断って接近し射撃を加えるミレーヌ。
僅かな殺気も感じ取れるのに何故…と問うエッグにミレーヌは、女は「愛」をもっても相手を殺せるのよ、と答える。
 …ぐらいの救いは残すのかと思ったが、本当に何の容赦もない終わり方。
格好悪いポーズで息絶えるエッグは余りにも憐れで、泣ける。

 前回、ミュータントのエピソードが、それ自体はハードで面白かったものの、第二話に持ってくるには重すぎ、もうちょっとスパイとしてのアクティブな行動を描いた後で「異色編」として扱うべき内容じゃないか、と思ったけれど、各回バラエティー形式で色々な面(異色続き?)を見せてくれるなら、それはそれで良し。
 期待も予算も掛かっていたと思われる平成『サイボーグ009』でさえ ここまでは無理だった、と思える作画クオリティーが、三話目まで来て まだ保たれているのは驚異的であり、嬉しい。



『はぴねす!』03.「オアシス」

 杏璃、頑張るの話。
 学園内のカフェテリアで働いている雄真義母の紹介も出来、脇を固める話だったのか、とは思うけど…
 バイトするのは杏璃だけ、可愛いウェイトレス姿を披露するのも彼女のみ、暴走魔法でいつものように失敗し、一度挫けかけたが頑張って魔法を打ち消す根性を見せたのも彼女。
…春姫が もの凄く脇役に見えるんだけど。
 一応はヒロインであろう春姫のキャラがまだ明確になっていない内に、動かし易いのは分かるけど杏璃ばかりをメインに描いてしまうのは、どうだろ。
サブキャラ「も」魅力的である、というのは大歓迎だけれど、「ヒロインが置いてきぼり」だと、作品全体を引っ張る力まで弱くなってしまう(「杏璃の失敗と成長」だけが、この作品の原動力?)。

 杏璃から強引に誘われて、あるいは友達を助けたいという自発的な意志により、春姫もカフェテリアで働かせればストーリーの流れから外さずに済んだような。
 そういうアクティブなキャラじゃない、と考えるなら、明確な人生目標を持って頑張る杏璃を見て、優等生でありながら ただ漠然と過ごしてきてしまった自分を省み、皆を幸せにするための魔法の習得を より強く動機付けするとか、彼女を中心に据える構成は いくらでも考えられたと思う。
 今のままなら、いっそ、幼少期・男の子への思い出を持つキャラも杏璃に変えてしまった方が、スッキリ見られそう。

 作画が…これで「悪い」というのは、放送本数過剰の現状で頑張っているスタッフに気の毒だとは思うけど、やはり崩れが見られる。
「杏璃コピーが大量に暴走」のシーンで、逃げまどう生徒達を2パターンのキャラによるリピートのみで表しては、「こちらも大量コピーされてる?」と見えてしまい、何がギャグなのか不明確に。


2006年10月19日 木曜日

『夜明け前より瑠璃色な』03.「お姫様 料理対決!!」

 月面世界からやってきた お姫様・フィーナのキャラを立てるべく、学校に行かせたり料理が得意な様子を見せたり、基礎固めのストーリーが続く。
 無難で、悪くはないんだけど、この作品ならでは、という特色が感じられない内容。
 料理に関しても、「かなり上手く作れる」程度の腕を持っている事で、壊滅的に駄目な菜月と比べ、扱いが薄くなり、印象を弱くしているような。
フィーナの方をダメダメに設定するか、技術があって傲慢な「料理同好会」というようなものを登場させ、勝負の形式に持ち込み、食べる人への愛情の差で彼女が勝つとか…まだ開幕して間がないのだし、もうちょっとヒロインにスポットを当てる構成にするのが良いかと。

 可愛い、ふわふわとした作品には絶対に必要である高い作画クオリティーが維持できなくなっており、残念。
 女性キャラクター達が可憐に見えないと、作品の存在意義すら揺らぎかねない。



『BLACK LAGOON The Second Barrage』15.「Swan Song at Down」

 無敵・不死身に思えた双子の少年(少女?)が迎える、悲惨な最期。
自分達は死なない、と考えて行動しているような彼らの態度から、何か裏付けがあるのかと思ったが、あったのは「他者を殺す動機と、そう し続けていれば死なずに済むと信じる心の傷」を負うに至った、過去の出来事のみ。
 「陽気な」マン・ハンティングから一転し、体を撃ち抜かれ、泣きながら息絶えていく少年の どことなく『灰とダイヤモンド』な死に様は、当分忘れられそうにない。

 ロック達は、双子の少女(実は少年?既にどちらの性別も失われていた?)の逃がしを請け負う。
 ホテル・モスクワとは対立する行動になってしまうが…今後、ややこしくなりそうな。
彼らは仕事として逃亡を請け負っただけなので、特に怨恨の対象にはならない?
少年の死を、「疲れた」気分で見送ったバラライカとしては、目が届く範囲内で自らの手により始末する形にならず、「これ以上 疲れずに済んだ」部分もあったのか。

 ロックに対しては、傷付いた ただの子供の姿を見せる少女。
 生まれつき救えない魂ではなかった。
でも、今はもう、いかなる方法によっても救えない。
 彼女の心を救済できるのは、ロックの「人としての」優しさではなく、最後に見た、全てを受け容れるような青い空だけだったのかも知れない。

 打ちのめされるような狂気とパワーと切なさに満ちた、凄い話だった。



『ゴーストハント』03.「悪霊がいっぱい!?」 #3

 ファースト・エピソード、ようやくの終幕。
 霊現象だという霊能力者達の対応を否定した、一也の合理的(?)地盤沈下説も正しくないとされ、真相はどういう形になるのかと思えば…
両案折半、異変の大半は地盤沈下だが、一部に生きた人間の超常的能力が関わっていました、という事。
 初出の、しかも納得できるような原因はそうそう思い付かないだろうし、全部 個人のパワーによる物でした、では一也がアホに見えてしまうため、着地点として ここいらが無難か。
なるほど面白い!というようなアイディアではないが。

 しかし…「思春期の不安定な心理状態はこういった異変を起こしやすい」ぐらいの説明で、みんな納得できるんだなあ。
フィクションのパターンとしては よく見るけど、「なるほどね」で済む話でもないような。
 異変を引き起こしていた少女は、「力を使い果たした」という訳でなく、また同じような心理状態に置かれたらパワーを発動させてしまうかも知れないし。
そこまでの解決は、依頼内容に含まれていない?


2006年10月17日 火曜日

『ハピラキ ビックリマン』01.「天使と悪魔でモンモンタイム!オレが歩けばラッキーにあたる!!」

 ビックリマンって息の長いネタだなあ。
まだこうして新作が作られるほど、人気があるとは思わなかった。
 シールなどの商品展開を、今でも継続したり刷新して行っている…のかな?

 アニメの内容は、正しく子供向け作品といった雰囲気で、オッサンがどうこう言うものではない。
 これまで『ビックリマン』のアニメは、子供向けっぽく作りながらも、途中からシリアスだったりドラマティックだったりする方向に上手くスライドさせ、大人の視聴者をも引き付けられる物語に化けさせたりしていたので、これも見続けていれば「面白い!」と思える作品になる可能性は十分にあると思うのだけれど…
 視聴対象アニメを出来るだけ絞りたい現状、そんな余裕は無く、ここまでに。



『働きマン』01.「女の働きマン」

 原作未読。
 仕事はそこそこで済ませ、プライベートにこそ生き甲斐を見つけようとする最近の風潮に真正面から立ち向かう、ワーキング・ハイ全肯定作品。
 一話目からギュッと詰め込まれた構成で、ヒロインの個性と特性をカッチリ示し、ドラマも完結させる見事さ。
カタルシスのある楽しいドラマ、というより「リアルな」ストーリーのため、スッキリとした終わり方ではないが、それはそれで大人向き作品として正しかろう。

 「萌え」の対極に居るヒロインの造形が、凄い。
この お姉ちゃん相手に、「萌え〜」とか言ってられる猛者は居るのかどうか。
 働く、特に女性視聴者にとっては、こういうヒロインの方が身近なんだろうな。

 見続けるつもりだけど、オタク的視点から突っ込めるような隙が無いもので、感想は書かない・書けないと思われる。



 そういえば、この前 受けたインタビューの内容が「ネットランナー」誌の最新号に掲載されております。
 大して面白いことを喋れている訳ではなく、「是非お読み下さい」と言える内容に出来ていないのは、全てインタビュー対象であった ぼくの責任ですが…インタビュアー・芝田様、編集部様の力量により何とかそれらしく形を整えて頂けましたので、書店で見かけられましたら、チラッと覗いて頂けますと幸いです。

 まーアレですね、こういう時は、いい気になった自慢話とか他作家の悪口とか、もっと極端な事を言っといた方が、きっと読む方には楽しいんでしょうね。
無難な話だと、わざわざ読んで頂く価値というものに疑問が生じてしまう訳で。
 反省。

 大昔、受けたインタビューで、「ライバルは?」と聞かれ、インタビュアー氏が気心の知れた編集さんだった事もあり、つい「うーんと、えーと、ライバル…ああ、手塚治虫先生ですとか。いや勿論それは冗談ですけど。そうですねえ、あんまり そういうの考えた事無いです」などと答えたモノが、記事になると、
「ライバルは?」
「手塚治虫です」
というようなキッパリした まとめられ方になっており、分もわきまえず思い上がった馬鹿みたいで(実際、当時 周囲からそう言われた)ヘコんだ経験があるため、つい無難に済ませようとしてしまいます。

 あ、「ネットランナー」記事中、一つだけ。
 有害コミック冬の時代の話で、「僕と付き合いがあった出版社はあんまり気にせず単行本出してたんで…」の部分は、心の中で「頑張って単行本を出してくれたんで」と読み替えて頂けますと助かります。
 あの頃、「気にせず」だけで単行本が出せる状態には、当然ながら無かった訳でして、迂闊な言い方をしてしまったと、記事になったのを読んで今更ながら気付き、反省してます。


2006年10月16日 月曜日

『Bartender』01.「バーテンダー」

 原作未読。
 バーテンダーのストーリーを開幕するにあたり、「バー」にも「バーテンダー」にも徹底して否定的である男を中心に据える、この構成が上手い。
題材に余り興味がなかった、あるいはこの男と同様に否定的だった視聴者の認識を、ドラマの進行に伴い、ひっくり返し、心を強く掴む事が出来る…可能性があるから。
 天才バーテンダーが彼に見せた行動は…
うーん、それで効果があるのかなあ?と思うし、作った飲み物も、それで客が感動するかどうかは「製作者の匙加減一つ」って部分が大きいでしょ、と、ヒネくれた事も思うけど、バー(止まり木)にテンダー(優しさ)を加えるのがバーテンダー、というような言い表し方は非常に巧く、何となくイイ話を聞いたような錯覚を視聴者に与えることに成功。

 しかし、バーテンダーが嫌いな男。
バーに入るや、目の前のバーテンダーに職業をクサす悪口をさんざん並べておいて、その彼から「バーがお嫌いなんですね」と言われた途端、「何故それが分かった!」と心底驚いたような様子を見せるのに、爆笑。
分かるだろ、誰でも。

 要するに『美味しんぼ』酒場版、料理の代わりに酒と人生譚で相手の心を開かせる、そんなストーリーになっていくのかな。
 「一話も逃さず見続けたい!」と気負うようなアニメでなく、気が向いた時に ゆったりと見て、楽しめば良い、バーそのもののような作品。


2006年10月15日 日曜日

『コードギアス 反逆のルルーシュ』02.「覚醒 の 白き 騎士」

 主人公・ルルーシュの旧友・スザクは、実に何気なく生きていた。
まあこれは予想通りだけど、これまた撃たれた謎の少女の方は、死んだの?
 思い切ったストーリー運びだなあ。
 彼女が、死と引き替えに与えてくれたのは、相手を思いのままに操るジェダイのような、デス・ノートのような力。
直接、目を合わせないと効果がない、とか、一応のルールがあるみたいだけど、便利すぎるような気はしないでもない。
 この能力が面白く使えるかどうかは、今後、周囲の状況がどのぐらい厳しくなるか、に寄る。

 ルルーシュがテロリスト(ゲリラ?)にプレゼントしてあげた多数のロボットは、何?
危険なエリアを、護衛も付けず警戒せず、大量にロボットを積み込んでフラフラ走る列車、というのは、相当に考えられないような。
 ロボットが奪取され、自軍の動きが読まれているっぽい時点で、識別信号の事について誰か思い至っても良いんじゃ無かろうか、ブリタニア軍。
 ブリタニア軍壊滅寸前の危機的状況を、マッドサイエンティスト?が開発した たった一機のロボットで、逆転する。
…例えば「将棋」っぽいゲームをやっていたのに、相手が「俺の飛車は360度、どこへでもどこまでも移動できる。盤を離れて畳の上も行ける」と言い出したようなもので、戦略も戦術も あったものじゃない。
 知略のルルーシュ、デタラメなパワーだけで困難を切り開いていくスザク(人望も付きそう)、という対比で進めるシリーズなのかな?

 いや、文句ばかり言ってしまったけど、原作を持たないアニメオリジナルのストーリーにしては非常に頑張って構成してあり、敵の間が抜けているのも、緒戦のザコだからと考えれば妥当なレベル。
知的で悪辣な主人公のイメージが余りにも『DEATH NOTE』っぽいもので、つい あの緻密さを求めてしまうが、それは過度に望みすぎだろう。
 まだゲームのルールを提示している期間だと思え、本領を発揮するのは基本的な説明が終わってから、かな。



 〆切前スケジュールに突入。
今月は、これから三本描きますので、月末まで更新が不安定になりそうです。
 すみません、ご了承を。


2006年10月14日 土曜日

『ネギま!?』02.

 オープニングが、まるっきり『ぱにぽにだっしゅ』。
あの、何本もパターンを作って見せてくれたOPのどれも大変に面白く、お気に入りだったので、それを『ネギま!?』バージョンにしたような出来に、感動。
 普通、登場する少女達を何とか印象的に、可愛く見せようとするのがOPだと思う。
そういう意味で、前アニメのは、出来が良いかどうかはともかく正道を行っていた。
 こちらは、多くのカットで少女らを、誰か分からない体の一部と、「名前」でさえなく「ナンバー(出席番号?)表示」のみで表している。
…思い切ったなあ。
「人数が多すぎてキャラクターを全部は憶えきれない」この作品の特徴を、端的に表していると言えるし、パロディーにしているとも言える。
 スタイリッシュな作画も心地良く、走る明日菜の足取りが、次第に力を増していく様子を演出して見せる上手さなんて、鳥肌もの。

 OPで心をガッチリと掴まれて見てみれば、今回はアクションシーンの作画が非常に充実していたし、明日菜の記憶を消そうとする連続ギャグと、ネギを起こさないようそ〜っとベッドから降りる彼女の優しさを示す細やかな演出など、見所が十分。
 テレビ東京の厳しい基準に沿いながら、色っぽいカットを作り上げるのにも、このスタッフは長けている。
 ストーリーは、エヴァ・エピソードを中心に かなり駆け足だと思うけれど…どうだろ、原作未読の人にはこれで分かるだろうか?
自分は既読なもので、その辺の判断が付きづらい。
 この急ぎ方からすると、放送期間は1クールぐらい?

 なるほど、これは再アニメ化した価値がある出来だなあ。
 最後まで見て行きたい。


2006年10月12日 木曜日

『スーパーロボット大戦OG -ディバイン・ウォーズ-』02.「目覚める念」

 オープニングも含んでだけど、最初の6分時点まで前回の模様をダラダラ流すのは、「親切なおさらい」というより「時間稼ぎ」に感じられる。

 瓦礫の下敷きになった彼女の事はすっかり忘れている主人公。
だから、こういう扱いにするのなら、彼女を「軽く怪我をしたけど基本的には無事」というぐらいの、心配して上げる必要がない状況下に置けば良かったのに。
 わざと主人公をダメ人間に描いているのだろうか?

 「彼女のことは置いて、突き進みたがる戦闘馬鹿」という描き方で魅力を出す方法もあるんだけど、ちょっと周りを囲まれたらパニックになるし、助けられて礼を言うでも「俺の獲物に手を出すな」でもなく、その程度の操縦能力しかない割には「後退して」と言われるや「逃げろって言うのか!」と猛反発。
良い所が無いなあ。
 敵と再度、一対一のバトルに突入し、ようやく見せ場が…と思えば…
ムチャをし過ぎて右腕損傷。
この辺も、「ゲームで使う自機はもっと頑丈なのに!」とか何とか、どうとでも主人公の失策に理由付けは出来たかと。

 敵に迫られピンチの状況を脱したのは、ロボットの背中から発射された武器のお陰。
主人公は何も操作していない訳で、彼の強い戦闘本能がメカとシンクロして武器を発動させたのか、ロボットが搭乗者を「守りたい」と考えて勝手に攻撃したのか。
サブタイトルに「念」なんてのが入ってる所からすると、超能力?
 とにかく説明不足で、これも「才能」とは余り認められず…
武器がないなら、どうせ使用不能なのだからとロボットの右腕をもぎ取り、敵に投げつけるか振り回して剣(バット?)のように使うかして攻撃。
敵もだけど、主人公を監視するオペレーター達を驚愕させ のけぞらせるような、「コイツは違うぞ」を見せて欲しかった(これだって、そんなに意外なパターンじゃないけど)。

 冴えない作画は、次回で持ち直しそう。
 ただ、ストーリーや演出が、とにかく普通。
この先に、何か凄い物が見られそう、というような期待感が持てない。
 ここまでに。



『ときめきメモリアル OnlyLove』02.「ときめきの運命」

 主人公を狙う運動部の面々が繰り広げる、挑戦。
 馬鹿の陸上部長、胸を見られたらもう泳げなくなってしまう水泳部長、デッドボールで負けを認める野球部長…どいつもコイツも困った役立たずばかり。
「こんなののドコが『ときメモ』だ」と思ってしまいそうだけど、そういえばあのゲームは基本的に何でもアリの、無茶苦茶な内容だった気がする( ^_^ )。

 ただ、「ときめき」という割に、主人公の心と周囲の状況が恋愛方向にまるで振れないのは、どうなんだろ。
 最大攻略目標ヒロインであろう天宮は、「伝説」方向に祭り上げるばかりで、生身の少女としては全く魅力的に描けてないし。
 ぶつかった衝撃で主人公に勘違いの恋愛感情を抱いてしまう変な女の子は出て来たが、「ときめき」って、こんな物で良いのかどうか。
…これまた、ゲーム内で主人公と少女が出会う切っ掛けは、割と多く ぶつかる事で成り立っていたような気もするが。

 ドタバタお笑い(滑り気味)アニメとしては こんなものかと思うけど、そうなると頑張って見続ける理由は、特に無くなってしまう。


2006年10月11日 水曜日

『ゴーストハント』02.「悪霊がいっぱい!?」 #2

 この話、まだ終わらないんだ。
 非科学的な霊能力者達が自信満々に乗り出していって、現象に全く歯が立たず、返り討ちにあったりしている中、渋谷一也が合理的な説明でもって颯爽と事件を解決…
という話かと思えば、それもまた違う?
 どんでん返しは好きだけど、一番最初のエピソードから、しかも長々と見せられては、結局 何を見せたいアニメなのか ぼんやりしてしまいそう。

 また、この科学的説明も…
あんなタイミング良くガラスが割れたり、天井が抜けたりする異変を、フィクションとはいえ「地盤沈下」で解決しようというのは、さすがに無理。
 だからこそ、その推理は間違いだという事になったんだろうけど。

 この後どうするのかなあ。
「実は霊現象でした」では一也がアホみたいだし、「やっぱりホントは科学的説明が付きました」とするには、より説得力のある説明が必要となり…
合わせ技で、確かに基本は地盤沈下なのだが、そこに霊(人間の思惑でも…「霊が見える」メガネっ子を超能力者にする等)が絡む真相にするとか。
 原作があるのだから、その辺は きっちり作り込んであると、期待して構わないのかな。



『ギャラクシーエンジェる〜ん』02.「激安!グラウンドバザーる〜ん」

 子供向けの、ぬるいコメディーとしては こんなものかも知れないが…
『ギャラクシーエンジェル』という名を冠しながら、いや、そうでなくとも、ストーリーは弱く、ギャグアニメとしか思えない骨格を持ちながら、まるで笑えないというのは致命的。
 毒や強烈さ、意表を突くスピーディーな展開など、「面白い」と感じさせてくれる要素が ほとんど入っていない。
 今回の話も、30分引っ張れるようなネタだとは思えず。
2本立て構成に戻した方が、短い分 中だるみが少なくなると思うので、良いかと。

 チームのキャラクターが、揃って弱い個性しか持っていないよう感じられるのも、困りもの。
 どうせ笑いが薄いなら、ヒロイン(だろう)アプリコットがルーンエンジェル隊への入隊を決意する所から始め、彼女の視点をずっと通すことで性格を理解してもらうとか、入隊試験あるいはチーム結成直後 初めての任務を扱い、まだ馴染んでいないキャラ同士のぶつかり合いで個性を際立たせるとか、もうちょっとストーリー重視の作り方があったと思う。
 『ギャラクシーエンジェル』シリーズでは、新シーズンの第一話を「ヒロインらが最後まで透明なまま」という恐ろしい反則技で始めたりしていたが、それは前シーズンの積み重ねがあることと、それでも個性を描き出せる自信の裏付けがあってのこと。

 ギャグが弱く、ヒロインらの個性も薄いのでは、何を楽しみに見続ければ良いのか分からず。



 とりあえず、第一話のチェックは終わり…かな?
 また今期も本数が多いこと多いこと。
全て見るのは不可能。
 そこそこの出来をした作品が多いので、非常に難しいんだけど…選別せざるを得ない。
 もう、「嫌いなタイプのキャラが出てる」とか「作画の崩れた話があった」とか、僅かなマイナスを切っ掛けに、視聴打ち切りが起こり得る。
「出だしは低調だけど、5話ぐらいからググッと面白くなりますよ」というような作り方では、見続けてもらうのが厳しくなるだろう。
 それが良いことか悪いことかは知らず。



『くじびきアンバランス』01.「みんな、がっこうでおどろく。7点」

 バスを待つ主人公と少女の様子を、極端な不運と幸運に描くことで、いきなり「くじびきアンバランス」というタイトルの意味が明確に。
 実に上手い…んだけど、二人のラッキー・アンラッキーの対比は、この後 余り意味を持たなくなってしまい、残念。
チェイスシーンで、または塔の上まで少女を追って行った時に、色々と「不運」がもたらす障害を描けたと思うし、それをヒロインの「幸運」が埋め合わせていくフォローも出来たろう。
 この差異は、さほど意味を持ってないのかな。
幼少期、二人に運の差は無かったみたいだし。

 無茶なことに、クジ引きで生徒会職に付けられてしまう主人公ら。
 それだけでは、割合と「普通」の話に収まりそうな所を、蓮子という短気で強引でストーリーも他のキャラクターも引きずり回す少女を投入する事で、アクティブ・大袈裟・コミカルな方向へと拡張する事に成功。
 この世界観で、万能戦車みたいな凄いテクノロジーが登場するとは思わなかった。
それも、蓮子のパワーがあればこそ。
主人公や先輩生徒会メンバーでは、こんな物に乗って出て来る事を許されまい。

 万能戦車で見せるチェイスシーンが、パワフルで、非常に良い出来。
 特に最後、時間ギリギリで生徒会室に飛び込むべく廊下を滑走していきながら、外装が剥がれ次第に中のキャラクター達が剥き出しになっていく所。
ハンナ・バーベラのギャグみたいで、懐かしい気分になりながら、笑ってしまった。

 今回は、監督・水島 努がコンテを切っているからこれだけの出来、という所もあろうが、次回以降、そんなにレベルが落ちないようであれば、是非とも最後まで付き合いたい、期待できそうな作品。



『乙女はお姉さまに恋してる』01.「口紅を引いた王子様」

 女装男の子話。
 男の子が、事情を抱えて女子校に転入する…というストーリーは、昔 考えたことがある。
どうしても、その理由付けが強引になってしまい、悩んだものだけど、この作品では「爺ちゃんの遺言」という事で、強引だけど何か?とばかり突き進む力強さを見せた。

 前も書いたけど、こういう恋愛「萌え」系作品で、一番魅力的なヒロインというのは、実は「主人公である少年」。
素直で優しく、他者を傷つけることを恐れ、和を尊ぶ、可愛らしい性格をしているから。
 周りを囲むヒロイン達は、勿論それはそれなりに可愛いんだけど、ある性格に特化した極端さがあり、扱いづらい部分がどうしても生じてしまう。
あるいは「ガサツ」と言い表しても良く、繊細な主人公少年と比べると、「女の子らしさ」が足りない。
 どうせなら…という訳なのか、本当に男の子をヒロインの座に着けてしまったのが、この作品。
 彼…彼女が周囲から好かれるのも当然。
本物の女の子より、女の子らしい行動を取るから。
「女子トイレに入ることに激しい抵抗を感じ、寮に帰るまでガマンしてしまう」なんて、正にヒロインたる おしとやかさじゃないか?

 転入して出逢う少女達も、皆それぞれ個性的で結構。
 主人公のお世話係になる奏など、同人誌でさんざん遊ばれそうなキャラ。
 エンディングのギャグ頭身ヒロイン達が、なかなかに強烈で笑ってしまう。
 コミカルな演出も楽しく、負担無く見続けられそう。
美しさ・可愛らしさが命になってくる作品なので、作画の崩れだけは無いよう頑張って欲しい。


2006年10月10日 火曜日

 少々発熱中。
 アニメ連続見疲れ(笑)?それは格好悪いなあ。
 単に風邪です。



『はぴねす!』01.「バレンタイン」

 魔法が絡む、恋愛ストーリー。
 アリガチな題材ではあるが、第一話の段階で「魔法」は さほど重要視されておらず、ヒロインが幼い頃 目にした男の子の「凄い力」は、野球やサッカーの才能でも、格闘技に関するセンスでも代替が効く。
 でも、魔法の方が受け入れられやすいから。

 そういえば、こういったゲーム絡みのふわふわ恋愛ネタで、主人公が熱血野球少年とかバスケットに全てを賭けているとかいう設定を、余り見ない(勝手にそういう行動を取れる『ときメモ』など、例外もあるが)。
オタ(自分も)にとって、「スポーツ」というのは、「魔法」などより遙かにファンタジー寄りの、身近でない存在なのかな。
 帰宅部で居てくれないと、恋愛に割く時間が少なくなってしまい、イベントを組むに困る制作上の事情もあり?

 柔らかそうに描かれた女性キャラの絵は、好み。
 ヒロイン・春姫の行動や心情が細やかに描かれていて、感情移入するに支障は無い。
ただ…彼女の「魔法に掛けては天才」という設定は、この世界での魔法の基準がよく分からないので、「セリフで示されたから そうなんだろう」と理解するに留まる。
 ヒロイン、男の子、双方に「親友」を付けて、彼ら彼女らとの関わりを示すことで互いの個性を立てていく。
基本的だけど、堅実なやり方で結構。
 幼少期の思い出と重なるイベントを設け、その重要さを印象づけつつ、「幼少期の思い出を起点として魔法を学んだヒロイン」と「何があったのか、成長して魔法を忌避するようになった男の子」という対照的な立場を取らせているのも、上手い(まだ、幼い男の子と成長した男子は別人、って可能性もあるが)。

 どう見ても女の子にしか見えない親友が、楽しい。
声も女の子だから、「男の子に見る」方が難しそう。
 ちょっとボケた先輩は、『To Heart』来栖川芹香に似てるな(魔法使い帽を被ると、モロに)。
 魔法授業の様子、まだ よく分からないが、設定はきちんと出来ている事を伺わせる。
 バレンタイン、というイベントは、普通もうちょっと物語が進んでから出て来そうなものだけど、ヒロインの想いを年月の分だけ溜め込んだチョコで具体的に見せるのが、なかなか。
「悩んで悩んでようやくチョコを渡す」普通の流れではなく、「発作的に渡したチョコに、次第に意味が付いていく」物語になるのか。

 派手さは無いが、好感の持てる滑り出し。
 視聴継続。


2006年10月9日 月曜日

『銀色のオリンシス』01.「水色の再生」

 オープニング。
どこの『機動戦士ガンダムSEED』かと思った。
演出の仕方とか、どう見ても「たまたま似た」のではなく、「意識して似せた」ものだろう。
 主題歌が「destiny」という曲名なのは、洒落たつもりなのかどうなのか。

 こうして見ると、今更ながら『ガンダムSEED』や『ファフナー』は、相当に高いレベルの作画に支えられていたのだ、という事がよく分かる。
 人気デザイナー・平井久司のキャラクターは、決して描きやすいものではなく、画力の低い人の手に掛かると「悲惨」な印象さえ与えてしまいかねない、難しいもの。
同じデザイナーを使うことで、人気を得ようと考えたのかも知れないが、元々さほど良い作画陣を揃えられない作品だろうに、氏が担当した既存のアニメと どうしても比べてしまう事で、レベルの低さが余計に際立ってしまう。
 女性キャラのシャワーシーンさえ、大して目に楽しく描けていないのだから…

 お話も、荒い。
 どこかで見たような世界、パターンで流したような登場人物、凡庸な演出(コンテは池田成なのに)、興味が持てない唐突な次回への引き…問題だらけ。
 まずロボット戦闘から始めるサービス精神は結構だけど、その戦いが、自陣営の戦力も敵の特性も勝利条件も ぼんやりした、工夫のない物で、見ていて面白く感じられない。
 謎の少女との出会いを演出するのに、主人公が「たまたま」入った小汚い酒場の二階から、彼女が無駄に気取って降りてきて、ペンダントを「後を追ってきなさい」と言いたげに落として歩き去る、という、空回りと言うにも痛すぎる見せ方をしてしまうのは、どういう意図なのか。
今回、主人公は謎の少女とその後 絡まず、また別の不思議少女と楽しい(?)時間を共にしてしまう、分裂気味のストーリーにも感心しない。

 文句ばかり言っていたけれど、『ガンダムSEED』には、次回も見ようと思わせるだけの熱意とパワーと画面クオリティーがあった。
 このアニメ、主役メカがまだ出ていないのだろうし、もう少し見るかも知れないが、余程 化けない限り、そう長くは持ちそうにない。



『護くんに女神の祝福を!』01.「恋するビアトリス」

 あー、公式ページのアドレスが、タイトルとは関係ない、megadere(メガデレ).comだ。
「ツンデレを超えた“メガデレ”」という定義だそうで。

 冒頭、とにかくイキナリ、美少女の先輩から「あなた、私と付き合いなさい」と言われてしまう主人公。
凄い願望充足ぶりだ。
 こういう脳天気さは嫌いじゃないけど、もうちょっとだけ、好かれるに至る理由付けがあれば良かったかなあ。
次回以降、実はこういう隠された理由があって告白を行いました、という説明がなされるのかな。
本当に、単なる動物的直感に基づいた一目惚れ?

 先輩・絢子は、人間離れした戦闘能力を持つ。
最初、例えば大食いの人を「食べ放題の料理店を一撃で破産させる」とか揶揄して言うように、彼女のパワーについても「スポーツ万能、ちょっと怒りっぽい」ぐらいの事を大袈裟に言い表しているのか、と思ったが、実際に超絶パワーを持ってるのね。
 大金持ちでもあるみたいだけど、車のドアをもぎ取ってスケートボードみたいに使ったり、覗き見る生徒会連中へのお仕置きに車一台潰したり…というのは、あんまり賢い行動ではないような。
絵的な派手さを演出しているのは分かるが。

 学園一優秀な美少女が、冴えないボク(成績は良いみたい)の恋人に…というのは、もう伝統的なパターン。
 イベント好きの生徒会が二人にチョッカイを出してくる、というのも、今期新番組に限ったって何度か見ている。
 ただ、よくあるパターンは、人気があるからパターンになるほどの頻度で使われたって事。
要は、それを どれだけ楽しく、気持ち良く見せられるか。

 絢子が抱える心の壁も、それを主人公が突き崩す過程も示されないので、とにかく早く「デレ」を見せたい、という焦りばかりを感じてしまうが…
作画は良好、絢子の造形・反応が可愛らしいことで、楽しく見られるキャラには出来ている。
 彼女に好かれる主人公がまた、チビで女の子のような顔立ちをしており、見る側の負担を激しく軽減。
 「主人公の無垢な心が周りの女性達の心を溶かしていく」という形式に落とし込むのかな?
彼は、「周囲のガサツな美少女達」から奪い合われる「お姫様」の役割を果たしそうな気がするんだけど。

 気楽に見続けられそうで、問題なく視聴継続。



『砂沙美魔法少女クラブ シーズン2』01.「選ばれし少女達」

 冒頭で、第一シーズンのおさらいを軽く見せてくれたのは、親切。
 ああ、みんなこういう特殊能力を持ってたんだっけ。
でも「大きくなったり小さくなったり出来る力」って、有効に使った事あるかなあ?
いや、力を有意義に使えている子の方が少ないか。

 内容は、まあこれまで通り。
多少の危険な予感を孕みつつ、合宿に向けて物語が動き出す。
 作画レベルがガックリと落ちてしまったのは残念。
少女達の可愛らしさが主戦力になっている作品なので、このまま低迷するようだと辛い。

 難しいことを考えず眺めるには問題のないアニメだと思うが…このまま最後まで見続けても、「悪くはないが絶賛するほどでもない」といった感想に留まる事が予想される。
 前シーズンだけで、この作品については十分満たされた気分になっているため、チェックする本数を一本でも減らしたい現状、視聴はここまでに。



『人造昆虫カブトボーグ VxV』01.「親父越え!勇気のライジング・プロミネンス」

 「ムシキング」的なゲームから作られたアニメかと思えば、元のオモチャはミニ四駆とかベイブレードのような、リアルで対戦するタイプなのか。
 で、内容も大体『爆走兄弟レッツ&ゴー』『爆転シュート ベイブレード』なんかと同じパターン。
面倒な前置きナシでバトルに入る手軽さが、今風かな。

 ふと気付けば、サブタイトルで内容についてのネタバレをしてる。
今回、主人公に挑み掛かってきた謎の仮面男は、意外な事に実の父親であった…というのが一応は大きな仕掛けだろうに。
 しかし、半裸で、格好悪い仮面を付けた上、戦闘員みたいな人達を引き連れ、子供達のオモチャを取り上げては壊す悪行を重ね、お遊びの対戦のために妻も子も…人生全てを投げ打って のめり込んでいるオヤジは、心底 嫌だなあ。
 戦いの最中、イメージとして隕石が落下し、炎が虎の姿になる、それはよくあるパターンだから分かるけど、会社員っぽいお姉さんの幻が出て来て口からよく分からない文字のような物を吐き出す「ワン・ハンドレッド・トランスレーション」は、何を表してるんだろう?
直訳で「100の翻訳」?どんな攻撃?あんまり強そうじゃないが…

 こういう作品のパターンに対する「悪意」すら感じる、馬鹿馬鹿しさ。
思いつきだけで進めているっぽいデタラメさ加減を楽しんでくれる、ヒネくれた年長者に向けて作っているなら、面白い狙いかも知れない。
 かなり笑ったんだけど、個人的には、一話を見ただけで お腹一杯になってしまったため、ここまでに。



『Gift〜ギフト〜』01.「虹が宿る町」

 あれ?これ『ダ・カーポ』
 キャラクターの雰囲気、髪型、主人公が朝 少女に起こされる所から作品を始める お約束、魔法が絡むストーリー、咲き誇る桜の木…
何もかも、『ダ・カーポ』そのまま。
 既存の作品を好きだったファン層に対し、似た内容の物を届ける事で彼らの心を埋め、商売に繋げようとする戦略?
驚くぐらい、隙間狙いの作り方だなあ。
それが悪いとは言わないが。

 この作品の大きな仕掛けである「Gift」が、分かり辛い。
公式ページによると、「生涯一度の魔法のような不思議な力。贈る側と受け取る側の合意で生まれる奇跡」という事だけど、そんな漠然と言われても。
 第一話後半は、贈る側・受け取る側の合意が上手く取れていなかったためGiftが暴走し、周囲に迷惑を掛ける筋立てだったんだけど、それを見てもやっぱりよく分からない。
 結局、上手く渡せなかったGiftは、正しい形だと何になるはずだった?
 生涯一度しか使えない魔法を、こんな発作的に使ってしまって良い?
まあ、こんな恥ずかしい、思い込みばかりが強い魔法、使えるのは学生時代に限られるかも知れないが。

 空を飛んでいた魔法少女はどういう扱い?
主人公は上空から落ちてきた際、巨大クッションを出現させていたが、これも魔法?
彼らのみ、継続的に力が使える特殊能力者?
 「誰でも使えるが、一生に一度だけのGift」という特異な設定と混乱してしまうため、彼らの特別な能力は、もうちょっと後になって出した方が良かったような。

 女の子達は可愛いと思うし、ほのぼのとした空気も悪くないけど…
とにかく、「かつて一度見たアニメ」という気がしてしまい、見続けたい気持ちは弱め。
 もう少し見るが、最後まで行けるかどうかは…



 新番組ラッシュは一段落かな。
 地上波のものは大体見て、感想を書いたと思うけど、UHF波がまだまだ残ってる。
そうこうしている内、全番組が二話目に突入。
 むううー。
 しかし、一日中 家に居てテレビを見ていられる自分でさえ消化に苦心する作品量。
他に時間を取られてしまう学生や社会人は、例え全て見たくても、不可能だろう。
 DVDとか、売れて、商売になってるのかなあ?
放送中の作品を見るのに手一杯で、昔のアニメまで見返している余裕は無いような気がするんだけど。

 量が凄い割には、見るに耐えないほど作画面の崩壊したアニメが無かったのは、驚異的。
 異常だ異常だと言われ続けてきたアニメ放送本数だが、異常も続けば日常になる、という訳で、限界を乗り越え続けることにより、制作会社の体力がガンガンと向上してきた、って事だろうか。
 その影に、死ぬ思いをしているスタッフが数多く居るんだろうけど。


2006年10月8日 日曜日

『銀河鉄道物語〜永遠への分岐点〜』01.「新たなる旅立ち」

 第二シーズン開幕…なんだけど、リアルタイム放送中、音を消して画面を少しだけ眺めていたら、主人公がまた実家で働いているので「第一シーズンの再放送か『これまでのあらすじ』?」と勘違い。
休職中、故郷に帰っていた、って訳ね。
 ここから見始める人のために、基本設定を押さえよう、という意図もあるかな。

 内容は、お馴染みのもので、安定した出来。
 ハッキリしない部分があったり、主人公の乗る暴走車両を大気圏突入から救うため、とはいえ、列車砲を当てて弾き出す、ってのは無茶すぎとか、思うことはあるけど、銀河鉄道は「男の熱い魂」さえあれば不可能など無い乗り物なので、オッケー。
 前作は、未熟だった主人公が成長する物語だったが、今作では更に未熟な新人が加わっており、その成長を主人公が見守る要素もプラスか。
 主題歌は、ささきいさおであって欲しかったなあ。
女性の優しげなボーカルだと、「燃え」が足りない。

 前期も楽しく見ていたので、今期も見続けるつもり。



『家庭教師ヒットマン REBORN!』01.「えぇ!?俺がマフィアの10代目!?」

 原作既読。
 無難な第一話。
 死ぬ気弾を受けたツナの暴走。
割合に頑張って描いてあったとは思うんだけど、圧倒されるような迫力が足りず。
ここの弾けぶりが、当分の間大きな魅力になる作品なので(現在の連載ではさほど重視されていない)、もっともっとパワフルに演出して欲しかった。
 あと不満と言えば、リボーンの声が可愛げ過ぎる事。
こんなに甘えたイメージじゃなかったんだけど…じゃあ誰の声なら良かったのか、と言われても困るが。

 アニメとは関係なく、原作。
 勿論、元々かなり描ける先生だったけど、最近になって画力の伸びが凄い。
苦しい週刊連載に耐えて耐えて描き続けることで、経験値を積み、それがレベルの上昇として目に見える形で現れてきている感じ。
ああ、「お前も週刊連載気分で原稿描いてレベルを上げろ」というツッコミはナシの方向で(^_^;)
 内容も、弾丸を受けてパンツ一丁で走り回って…という馬鹿馬鹿しいギャグの設定から、お馴染みジャンプ・パターンに持って行けるとは思わず、驚く。
 もしかしてリボーン達チビは、いずれ本来の姿である「長身の美青年」に変わったり また子供に戻ったりして、女性ファンを喜ばせる予定?
 面白い。

 原作を読むだけで満足しているため、出来としては悪くないけれど、アニメの視聴意欲は低め。
 時間があれば見る、というぐらいの姿勢で。



『史上最強の弟子ケンイチ』01.「梁山泊!豪傑の集いし場所」

 原作は、途中から既読(サンデーを数年前から買い始めたため)。
最初の方はどういうストーリーだったのか知らず、新鮮な気分で見られた。

 バトルシーンと並び、お色気が大きな売りの作品なので、テレビ東京での放送は宜しくない…と思ったが、あれ?パンツが見えてなかった?
最近規制が緩んだのか、アニメのスタッフがゲリラ的にやってしまったのか。
 少々病的に感じられるほど規制が厳しかったから、そろそろ「油断」が見えてきても良いと思うな。
表現の自由度は高いほど嬉しい。

 原作の、「気」が目や口から吹きだすような迫力ある描写を、満足できるレベルで表現できている、とは言い難いが、画面の作り方は特に悪くない。
第一話のクオリティーを維持できる限り、見続けても構わない出来ではある。
 既読の原作部分にアニメが追いつくまで、視聴継続。



『ぷるるんっ!しずくちゃん』01.「しずくの森のしずくちゃん / ラブリーアイドル!うるおいちゃん」

 どう見ても幼児向けほのぼのキャラクターなので、さぞや ぬるい内容なのだろう、まあチョイと見て「いい歳のオッサンがどうこう言う作品じゃない」と書いてお仕舞い、と思っていたが…
うわぁ、対象年齢がどうこうじゃなくて、感性が飛んでないか、このアニメ?

 ファーストシーン、空から舞い落ちる主人公しずくちゃん。
なんだか雨粒の妖精らしい。
 幼児っぽい姿、声をしている しずくが、雷鳴轟く中を「あははははあははははは」と無闇に笑いながら漂っていると、上空から我が子を置き去りに さっさと落ちていく しずくパパ・ママ。
しずくが「何してるの?」と聞くとパパ「さあ〜何してるんだろう?」、「ドコへ行くの?」と聞くとパパ「さあどこ行くのかなあ?」ママ「多分どっかでしょう」パパ「いいんじゃな〜い、シアワセなら〜」……会話になってないぞ。酔ってるのか?
 大体、まだ幼そうな しずくを放り出し、夫婦二人だけで行動してしまって良いものか。
 いくらリアリティー無視の「絵本的世界観」作品とはいえ。

 パパママしずくは「自然を守る」という大義を背負っているらしいが、その方法は知らないと言い、また自分達の子供を守ることには無関心、という無責任さが凄い。
 全編、こんな感じの、ギャグというより「調子が狂ってしまうシュールな やり取り」で構成されている。
画面内のキャラは あんまり突っ込んでくれないので、見ているこちら側が「なんでやねん」「違うだろ」などとツッコミを入れつつ見ないとダメ。
 余りの意表の突かれぶりに、爆笑、というより、脱力したような「ははは、は」ぐらいの笑いを時々漏らしてしまう。
個人的に、笑いのヒット率は『ギャラクシーエンジェる〜ん』より ずっと高かった。

 エンディングの歌詞「ぷるぷるぷるぷる しずくちゃん キュートな笑顔で ドキュン!」という、このドキュンには何か意味があるのか無いのか。
 面白い、とは思うんだけど、常識がまるっきり通用しないので、見ていて疲れる内容でもある。
「癒し」系作品とは真逆。
 さすがに視聴は打ち切りたいと思いつつ、来週も見てしまいそうでコワイ。



『天保異聞 妖奇士』01.「妖夷、来たる」

 設定は、かなり詰めて作られている事が感じられる。
時代背景についても、湯屋の風景など非常に細かく描写され、「今ではない、別の時代の物語」であるのが分かり易い。
 ただ…一刻も早く基本設定を消化したいと思ってか、説明ゼリフが多用されており、油断していると、もしかして重要かも知れない情報を聞き流してしまいそう。

 主人公のキャラクターや、彼が追いやられている浮民という特殊な立場について、何とか画面で示せているのは大したモノ。
 恐竜か怪獣っぽい見せ方だけど、妖夷の存在を示し、巨獣激突の予感を孕んで次回に続かせるのも、引きとしては楽しげ。
 しかし、妖夷が目立ってしまった分、人間の方の「力」が見えなくなってしまっている部分も。
まさか、人間をさておいて怪獣物になる訳ではあるまいから、やはり「人が、この事態にどういう方法で絡んでいくのか」を重視して欲しかったところ。
予告を見る限り、それは次回のお楽しみかな。

 まだまだ、これから面白くなるかどうか、予想が付かない第一話。
 気合いが入っている作品だとは思うので、その成果が良い方向に出て来てくれることを期待。



『Kanon』01.「白銀の序曲〜overture〜」

 前アニメから、四年の期間を置いて、再アニメ化。
 こちらの脳の傷み方が激しく、前にアニメ化された際の記憶が不確か。
ええと、名雪ら、キャラは可愛く個性的に描けていたが、分岐するゲームを上手く一本のストーリーにまとめ上げた、とは言えない出来だったような。
特にラスト、主人公が取る決断が余りにも強引で、心無く思え、エンディングでは呆然としてしまった覚えも。
 今作は、その辺りの不満を払拭してくれる出来だと、いいなあ。

 第一話は、非常に丁寧な作り。
 ぼーっとしている名雪のキャラは残してあるが、芯にしっかりとしたモノが感じられるため、馬鹿っぽくは見えなくなっている。
北国の少女らしく、厚着をしてもまだ寒さに震える祐一を尻目に、平然と着替え、まだ少し湿った制服で外を歩くのも平気。
 母・秋子も、家の前の雪かきを驚異的なスピードでこなし、凄さと同時に「雪国の人間」だと感じさせてくれる。
 あゆは…前アニメでは たい焼き万引きのまま済ましていたような気がするんだけど、ちゃんとお金払ってたんだっけ。
今作は祐一が しっかりと精算しており、道徳的に( ^_^ )大変結構。

 ほわほわとした「萌え」作品ながら、生活描写が非常に細やかに、しかも裏付けをもってなされており、地に足が付いていると感じられる。
ここいらは、他作品では大抵「面倒臭い・そんな所にこだわっても客は喜んでくれない」といった理由で、飛ばされがち(他人の事は言えない、自分も)。
 それをきちんと押さえる事で、主人公らが暮らす北国の「空気」に説得力が生まれていく。

 作画レベルは高く、自分の背中の羽を見ようとしてグルグル回ってしまう あゆ等、動きで見せるコミカルな演出も好調。
 今作は、どういう道筋を辿っていくのだろうか。
期待を持って見続けられそう。


2006年10月7日 土曜日

『コードギアス 反逆のルルーシュ』01.「魔神 が 生まれた 日」

 冒頭、複雑な世界設定を、怒濤のナレーションで説明されるのに めげる。
 日本の地下資源を狙って、ブリタニア帝国が攻め込んできた?
そいで、敵が操る巨大ロボットの前に、日本はボロ負け?
その後、日本は名前を奪われ、エリア11と呼ばれるようになった?
 何というか、ツッコミ所がありすぎて どこから突っ込んだら良いのか分からないんだけど…

 日本は資源の無い国と言われているのに、具体的には何を求めての侵攻?
架空の物質(ジャパニウムとか)を設定してあるのか、現在ではさほど重要視されていない物質が、資源枯渇などにより この世界では貴重になったのか。
 なんで、日本は実名で、敵国は仮名のブリタニア帝国?
侵攻地図からすると本当はアメリカみたいだけど、悪役として実名を出すのはマズいのかなあ。民間人も虐殺してたし。
だったら、日本も「ジャポニカ共和国」とか何とか、仮名で良いのでは?被害国は実名で構わない?
 「日本」という実名があると、敵国にのみ(だろう)存在する巨大ロボット技術に疑問が。
どちらかといえば、そういう方面は日本が進んでそうな。
いっそ、敵を宇宙人にでもすれば様々な不都合を一気に解消できたと思うが。
 国の名前を奪われる、ってのは屈辱的な出来事の象徴のつもりなんだろうけど、現代ではあんまりリアルじゃない。
どーせなら「エリア11」なんて割合に格好良い名前にせず、「ペケポン貧民列島」とか「ブリタニアの下僕・卑しい哀れな犬っころ人民居留地」などという、口にするたびブルーになるネーミングにすれば良かったのに。

 この辺りの疑問は、次第に解かれていくのだろうけど。

 本編。
 日本は、ブリタニア帝国の完全占領下にある。
という状況らしいけど、虐げられている日本人の描写が薄く、また…CLAMPの、というより木村貴宏のキャラクターが、人種の差を超えて「木村キャラ」としか認識できない個性を発揮しているもので、誰が日本人で誰がブリタニア人なのかサッパリ分からない。
ルルーシュは、日本人でありながらブリタニア人に成り済ましている、という事?
 ややこしい構造になっているはずの世界を、端的に見せるのが第一話の使命だと思うが、いきなりルルーシュが賭けチェスで貴族に挑み掛かる、などという何時代でドコの場所だか分からなくなってしまうようなイベントで始める意図は、奈辺に?

 その後、彼が遭遇する事件は、巻き込まれのパターンながら悪くない。
 混乱の中で、彼はかつての親友・スザクと再会する…
えええー、スザクその場で射殺?
どう考えてもこれじゃ困る訳で、「実は生きてました」か「超常の力で生き返る」んだと思うけど。
 ブリタニアが、割と発作的に日本人虐殺を開始。
…一部テロリストを除き組織的反抗もないのだろう日本人を、思いつきだけで、かなりの数まとめて殺す意味が分からない。
「指令を下す立場の皇子が、性格が悪い上に能なしだった」って事かも知れないけど、一応は現実世界の延長上にある設定の物語とは思えない頭の悪さ加減で、気持ちが入れられない。
 いや、リアル世界では時折、信じられないぐらい馬鹿馬鹿しい事件も起こるが…フィクションは それに甘えちゃイケナイなあ。

 謎を秘めた少女が登場。
即時、射殺。
 よく人が殺されるアニメだこと。
 当然、彼女も無事なんだろうが、「実は生存」を多用しすぎると、物語が安っぽくなりそう…

 高品質な作画、場面ごとに見れば悪くない演出とは裏腹に、随分と荒いストーリー運びの第一話。
どこに期待を掛けて見続ければ良いのかも分からず、困惑気味。
「アレコレと文句を言う」事を楽しむ姿勢なら、良く出来た題材っぽいが。
 数少ない巨大ロボット登場物なので、段々と面白くなってくれる事を祈って、見続けよう。



『すもももももも』01.「地上最強の許嫁」

 原作未読。
 「突然、親が勝手に決めた許嫁が家にやってきました」という、かなり伝統的なパターンのお話。
そこで、「許嫁は無茶苦茶な拳法の達人」とした所が、独自の色合いか。

 元気一杯、何があっても挫けず、ひたすら主人公を慕い、子種を欲しがる(ストレートだなー)もも子が可愛い。
チビで つるぺたの、色気には欠ける容姿だが、こういうのが好みの人も多いことだし。
 「意気地無しだった主人公が、許嫁の信頼を受け、勇気を取り戻す」のが こういう話のお約束だけれど、絡まれた不良グループを倒すのに、主人公は実力でなく奸計を用いて もも子の力を利用しており、熱血ストレートに行動していないという捻りが面白いところ。
ずっとこれで行くのか、やがて「少しは強くなりたい」という気持ちに目覚めるのか。

 肩の力を抜き、気楽に見られそうなアニメ。
 「万難を排して」というまでの決意は伴わないが、へらへらと見続けていきたい。



『あさっての方向。』01.「願い石」

 原作未読。
 面白いタイトルだなあ。

 内容は、キャラクターの個性や生活状況を見せる前に、取りあえず海水浴へ、という事で、何だかシリーズ中盤の息抜き話のような雰囲気の第一話。
出てくる男女は それなりに個性的に描けているし、微妙な人間関係も楽しげ、とはいえ、余りにも地味で、興味を引かれる部分が薄く、これはここまでかな、と思っていたが…
 後半で一転。
性格の悪さ(愛ゆえのテンパり?)を顕わにするメガネ娘。
タバコを小道具に、これまでの人が良さそうな様子から、ふてぶてしいとも言える態度に変わる兄ちゃん。
そして、大人・子供の立場が入れ替わってしまう妹とメガネ娘…
 これは、ドコへ向かう物語なんだ?タイトル通り「明後日の方向」?

 先行きへの興味で、しばらく見続けよう。
あんまりシンドイ話は遠慮したい気分だけど…



『夜明け前より瑠璃色な』01.「お姫様がホームスティ!?」

 冒頭、宇宙戦艦による艦隊戦を、近頃には珍しく3Dナシ、全て手描きで行っているのに感心。
 物語の内容。
月王国のお姫様が、地球に住む ごく普通の少年(姉は偉い人みたいだが)の元にホームステイにやってきました、という粗筋で大体想像が付く通り、明るいほのぼのコメディー。
 「かつて地球と月との間に大きな戦争があった」設定はシリアスだけど…
多分、「お姫様に何かあったら、また戦争になっちゃう〜」ぐらいの意味しかないんだろう。
後継者争いで お家騒動とか、間の抜けたテロリストに誘拐される、といったイベントもあり?

 高品質な作画で、キャラクター達も皆、罪が無く可愛らしく(あ、悪質なジジイは居るか)、とても見易い。
 お姫様が かつて地上に降りた事があるらしい、と示された途端、「ああ、主人公の少年とその時に何か因縁が結ばれたのね。恐らく初恋関係の」という予想が付き、多分それは外れていない。
新しい刺激に欠けている、とも言えるが、パターンに乗っ取っている事で安心出来る内容でもあり。

 負担無く見続けられそう。
 可愛らしさが命の作品だろうから、作画が崩れないと良いなあ。



『蒼天の拳』01.「賞金首・閻王」

 原作は、かなり長く既読。
 世紀末でなく、1930年代を舞台にした、『北斗の拳』の…ええとエピソード・ゼロでもないし、うーん、まあ前史。
 素晴らしく良い作画、という訳ではないけれど、取り立てて不足はない画面構成。
演出上の工夫なども見当たらないが、原作の「漢泣き」と「怖い顔した野郎共がアホな事言ったり下らない行動を取る事で成り立つギャグ」は再現されており、特に この内容に初めて触れる視聴者にとっては、悪くないだろう。

 アニメならではの魅力が薄く、ストーリーを既に知っている事で、視聴継続の意欲は低め。



『009-1(ゼロゼロナインワン)』01.「潜入者たち Infiltrators」

 ああ、このタイトル、全部英語読みなのね。
スパイだし、てっきり「ゼロゼロくノ一」と読むのかと思っていた。
そういう意味も掛けてあるのかな。
 原作は、大昔に単行本で読んだと思うんだけど、胸にマシンガンを仕込んであるという『オースティン・パワーズ』ではネタ扱いされてしまうようなヒロインの特殊能力と、せくしーな内容イメージ以外、ほとんど憶えてない。
 石ノ森先生の数多い作品の中でも、そうメジャーなタイトルではなく、なんでこれを今更アニメ化?と不思議だったが…

 なるほど。
 日本で一番、石ノ森章太郎先生の絵を格好良く・綺麗に・艶っぽく再現できる紺野直幸が、監督・キャラクターデザイン・総作画監督から、第一話はコンテまでこなしている。
この人が力の限り働く、という事であれば、話は別。

 実際出来上がった第一話の内容は、ストーリーから演出、サービスカットまで含め、非常に大人向きになっており、目に楽しい仕上がり。
 特に作画面は、『サイボーグ009(平成版)』の第一話を思わせるクオリティーの高さで、とにかく女性キャラの体が美しく・官能的・肉感的に描き出されていて、ドキドキ。
これがOVA企画だったとしても、購入した人間が「損をした!」とは思わないだろう力の入り方。
 エージェントであるヒロインらが見せるアクションは、パワフルでありながら その最中にも色気を失っておらず、驚異的。
 石ノ森先生ご本人に、この凄さを見て欲しかったなあ。

 物語としては、30分で終わるようなミッション、という事で、かなり駆け足。
エージェント・ガールズが特殊能力を生かして危機を突破していく、その過程にそれぞれ面白さを出そうという努力が見られ、大変結構。
 打ち上げられたロケットから脱出した時のパラシュートはドコで調達したのか、とか疑問があるけど…まあ細かい事か。
009-1の身体にはパラシュートが仕込まれている?
 009-4が全身武器で、009-7は変装能力を持つ…という辺り、『009』パロディーのような雰囲気。

 釈由美子の声も、ヒロインが寡黙な、喋りにさほど抑揚を必要としないタイプだという事で、問題なく聞ける。
 作画が維持できる限り、見続けたい。
これだけのレベル、そう何本もは もたないと思うんだけど…頑張って欲しい。



『DEATH NOTE デスノート』01.

 原作既読。
言わずと知れた、「少年ジャンプ」誌連載の大ヒット漫画をアニメ化。
数多く放送されている同誌からのアニメ化作品の中で、一番の期待作かも。

 内容は、期待に応えられるだけの物だったと思う。
 作画は高品質だし、ハッとさせる部分を持つ演出も巧い。
少々変えてあるシナリオも、別に悪くないだろう。
 丁寧にやっているだけに、突然ノート一杯に人の名前が書いてある、といった間を飛ばしてのシーンに戸惑ったりはしたが、話が分からなくなってしまうような事もなく。
 ノートに月が名前を書いていく時の動きが、「戸惑い」「畏れ」より「すっかり楽しくなってしまいノリノリ」な気分をよく表しており、次第に変わっていく(本性が現れていく)彼の未来を感じさせる。

 問題なく視聴継続。



『少年陰陽師』01.「この少年、晴明の後継につき」

 「安倍晴明もの」というのは、もう、一ジャンルを形成するぐらい人気がある。
この作品も、その流れの中に位置。
 主人公は晴明の孫である少年。
祖父とは大違いで、妖を見る力に欠けている…というのが基本の設定。
 その欠点を補ってくれるのが、猫のような狐のような、妖。
 二人がペアを組んで巨大妖と戦う様子は、まあ『うしおととら』。

 主人公とチビ妖の出会い、そして仲良くなっていく過程が かなり飛んでおり、弱い。
軽いタッチで綴られたジュブナイル、と考えれば、こんなものかも知れないが。
 チビ妖を逞しい美青年に変化させる必然性は無いような…人外の姿をしたままで構わないはず。
公式ページを見ると、老人になっているはずの晴明まで美青年に化けて出てくるみたいだし、そういうのを楽しみに思う女性視聴者向けのサービスなのかな。

 全体的に目新しさやコダワリが足りず、大量に新番組が始まっている現状では、お行儀良くパターンを踏襲して作ってある分、埋没してしまいそうな内容だった。
 あと一、二話見て、多分そこまでになるだろう。


2006年10月6日 金曜日

『スーパーロボット大戦OG ディバイン・ウォーズ』01.「鋼鉄の亡霊」

 ゲーム『スーパーロボット大戦』は遊んだことがあるが、オリジナル設定のキャラ・メカだけを用いた番外編は未プレイ。
 アニメの出来としては…ツッコミ所が一杯。

 誰と誰が何のために戦っているのか分からないタイマンのロボットバトル、そして世界状況を説明するダラダラとしたナレーションから、物語が開幕。
こういうのは基本的に、やっちゃいけない事。
 バトルについては、ゲームを知っていれば分かるのかな。
独立したアニメ化ではなく、ゲームのファン層にだけ向けて作られている、という事なら仕方ないが。
 ナレーションで説明された事柄も、「これをまず理解してもらわないと、第一話を楽しむのに障害が出る」というものではなく、不必要。
説明は、必要が生じた時、すれば良いのに。

 街を歩いていた際、「(ロボットの話になると)子供みたい」と彼女に言われ、立ち止まる主人公。
大好きなロボットの魅力について熱く語り出すのか、と思えば、突然シーンが切り替わって母親を見舞うべく病室を訪れている主人公と彼女。
 展開が飛びすぎていて、ちょっと混乱してしまったが…
 これ、「子供みたい」と言われたのを切っ掛けに、「大人にならなければ」と決心した主人公が、大学進学中止を母親に告げるべく病室に行った、という繋がりなのね。
分かり辛いなあ。
 人生を左右しかねない重要な決断だろうに、女の子のふとした一言で、発作的に決めてしまったような描き方で良いモノなのか。

 ロボットシミュレーションバトル、決勝戦。
 主人公は、まるで良い所無くボロボロに負けてしまうんだけど、これは「主人公が弱すぎた」のか「相手が超絶に強すぎた」という事か。
ギャラリーの口を通し、「あいつ、あんな腕でよく決勝まで来たな。ラッキーだけで勝ち抜いてたのか?」とか「相手側ロボットの動きがスゲエ!あんな攻撃見たことないぜ」と解説させでもしなければ、分からない。
 主人公がロボット戦闘の適性を、持っている・持っていない、というのは、後半に控える実戦を描く際、かなり重要になる情報なのに。

 瓦礫の下敷きになり苦しそうな彼女を置いて、ロボットで戦う主人公。
 緒戦は「敵が目の前に来たから、戦うしかなかった」という事で理解できるけど、オペレーターお姉ちゃんに下がれと言われても、それを振り払ってまで戦い続けようとする、その気持ちは分からない(無責任に下がれと言うお姉ちゃんの指示も分からないが)。
彼女が既に亡くなっており、「弔い合戦」の色合いがあるならともかく、常識的には まずロボットの力で瓦礫をどけて助け、病院に運ぶことを考えるべきだろう。
 救助なんて盛り上がらない絵じゃなく、ロボットバトル真っ只中で次回に引きたいのであれば、女の子の怪我を軽い捻挫ぐらいにして、心配を無くしてしまう方法もあったはず。

 かなり雑な作り。
そのため、主人公の魅力が伝わってこない。
 作画は今ひとつ冴えず、ロボット戦闘にしても並という所。
 今期、巨大ロボット物は珍しいので見続けたく思うんだけど…ちょっと厳しい。



『武装錬金』01.「新しい命」

 原作既読。
 オリジナルの精神に忠実なストーリーであり、かえってテンポ良く感じられる部分もあるぐらい。
 作画的にも非常にクオリティーが高く、上手く処理されたキャラクターデザインで、これならファンも納得できるのではなかろうか。
 熱血直情型キャラのカズキ、クールな斗貴子の温度差が良く演出され、バトルはパワフルで熱く、特に文句を言う所が見つからない第一話。

 この水準をキープして進んでくれるなら、非常に満足度の高いアニメ化作品になりそう。
 もう少し話が進むと出てくる、シリアスとギャグの境目に立って両方を入り交じらせてしまう強烈なキャラを、どのように料理してくれるのか、楽しみ。
 期待を込めて、最後まで見続けよう。



『RED GARDEN』01.「さよなら少女たち」

 最初、猟奇殺人の真相を追っていくような物語になるかと思い、中盤では ちょっと変わった学園ものになるかと考えたが、ラストでは対モンスター、超自然的戦闘モノに?
なかなかに捕らえ所のないアニメ。
 キャラクターデザインが非常に個性的。
アクが強すぎて、オタク相手に受け入れられるかな…
 この難しいデザインを描きこなす、作画レベルの高さは大したもの。
…これを維持したまま最後まで行けるかどうかは、GONZOがこの作品にどれだけ注力しているかによる。

 雰囲気が肌に合わず、少々分かり辛い所もあって、途中までは、一話での視聴終了をほぼ確定していたが、どうなるのか分からない次回への引きが上手く、先を見たい気分に。
 次回も見て、判断したい。



『ゴーストハント』01.「悪霊がいっぱい!?」

 原作未読。
 科学的アプローチを用いる者や、特異な能力を持つ者達が、怪異現象を解決していくシリーズ…なのかな。

 ごく普通の女子高生ヒロインが、性格の悪いゴーストハンターと知り合い、旧校舎の霊現象(あるのか無いのかも分からないが)と対面しようとする…そこまでで第一話は終わった。
 元気いっぱいのヒロイン・谷山麻衣が可愛いし、ハンター・渋谷一也の根性の曲がり方も面白い。
 ただ一話目で、リアルタイムには怪奇現象(もしくは そう見える現象)を きちんと描かず終わってしまう、この構成はどうなんだろ。
それぞれ個性的っぽい能力者達、彼ら彼女らの顔見せをするのも大切だろうが、作品の本筋となるはずの事件の印象が弱すぎ、物語への求心力を弱くしているような。
 能力者達は次回以降、順次登場させても構わないはずだから、最初は麻衣と一也達だけにキャラを絞り、規模の小さな事件を設定して、その解決を目指した方が分かり易くはなったろう。
これで原作通りなので、仕方ない?
 …短く終わらせる事によりアリガチな事件になってしまい、「なんだ、こんな程度の作品か」と侮られる恐れもあったと思われるので、難しい所なんだけど。

 取りあえず継続視聴。
 やっぱり、次回描かれるのであろう事態の全貌、その内容次第かなあ。
能力者を大勢出しながら、結局は科学で合理的に解決できてしまう、「この世には不思議な事など何も無いのだよ」的世界観の物語?



『マージナルプリンス』01.「翠緑(すいりょく)のエスクエラ」

 サブタイトルに、難しい漢字を使うなあ。
翠緑なんて、ATOKだと一発では変換できないぞ。
 携帯特化型女性向け恋愛シミュレーションゲーム…が原作らしい。
もちろん未プレイ。
アニメになるという事は、それなりに人気があるのかな。

 アバンタイトル。
 主人公姉の目線で、美少年キャラクター達が次々に自己紹介していく様子を見せる辺り、恋愛シミュレーションゲームの画面そのまま。
彼らを見つめる姉の側(視聴者側)を、美少年達が誉めてくれることで、ちょっと気持ち良くさせツカミとする やり方が、上手い。
 転校してきた主人公が次々に他キャラと出会い、基本的性格を見せていく構成は、アリガチながら無難。

 いきなり盗難事件の犯人扱いされる主人公に、面食らう。
証拠もないのに無茶苦茶だと思うけど、それだけ他少年達の結束は固く、自分達の中に犯人が居るとは考えられない、って事だろうか。
…外部のモノの犯行だという可能性だってあろうに。
 盗まれた宝石が嵌め込まれていた絵の前に、一人立つ少年。
何か、思い入れを語ったり、感傷に浸って泣き出すのかと思えば…突然 歌い出すのに驚き、次に爆笑。
なんじゃコイツ(笑)。
 その様子を目にして、何事か理解したらしく泣きながら走り去る主人公。
よく分からないけど、まあこの世界ではそういうモノなんだろう。

 転校取り消しになり、学園から追い出され、見知らぬ異境の地で さあ主人公はどうなる?という引きは、なかなか上手いと思う。
 が…女性向けアニメには違いなく、基本的には視聴対象外の作品なので、ここまでにしたい。


2006年10月5日 木曜日

『BLACK LAGOON The Second Barrage』13.「The Vampire Twins Comen」

 相変わらず原作未読。
 待望のセカンド・シーズン開幕…というより、少し期間を置いた この前までの続き、開始。
OP、EDがそのままなら、話数も前からの通しナンバーで付けられているという徹底ぶり。

 天使のように無邪気で可愛く、悪鬼のように残忍な、男女の双子が登場。
小さな体に似合わないデカい刃物、馬鹿デカい銃器を二人に操らせ、銃撃を加えた後 自室に持ち帰った男の頭部に「スマートボール台のように」釘を刺して遊び、それを心から楽しむ。
 とにかく、「ギャップの大きさ」で面白さを演出しているキャラクター。
そういえば、ご主人様である少年にだけ絶対の忠誠心を見せるメイドも、恐ろしい戦闘能力とのギャップを活かして作られたキャラだった。
 原作者は、こういう描き方が好きなんだなあ。
まあ、ゴッツい悪党面の連中ばかりとドンパチやっていては読者が(作者も?)飽きてしまう恐れがあるので、こういう反則技キャラを混入した方が楽しいのか。

 双子なら同い年じゃないか、と思われるお互いを、「お兄様・お姉様」と呼んでいるのは何故だろう?
普通、どちらか先に生まれた一方だけがそう呼ばれる、あるいは双方名前で呼び合ったりしそうなもの。
 親の記憶さえまるで無い過酷な環境で育ったため、どちらが先に生まれたのか分からず、互いに相手を精神的に上だと考え、年長に扱っているとか。
互いの顔の中に、頼るべき両親の面影を見出し、相手を「自分より年上の肉親(本当なら父母だが、年齢的に兄姉までに)」と思うことで精神的均衡を保っている…等々。
 黙って見ていれば、いずれ分かるんだろうけど。

 作画は高水準。
迫力と緊張感がある演出にも、文句ない。
 今期も楽しませてくれそう。



『ヤマトナデシコ七変化』01.「暗闇に差し込む光」

 アバンで語られる、悲惨な ふられ方をしたヒロインのエピソード。
 オープニング映像で見られた、美少年グループと、彼らの頭身を縮め簡略化したドタバタのギャグシーン…
 「大体分かった」「こういうパターンのモノは別に見る必要ない」という判断で、視聴終了…にしようとしたが…
 ああ、監督がワタナベシンイチなのか。
道理で、コミカルなシーンの間の取り方が上手いはず。

 男性キャラクターのデザインに最初は馴染めなかったが、いかにも「モテる男達」ではなく、少々情けなくアホにさえ描く事により、馴染みやすくするのに成功。
 ヒロインが抱えるトラウマは、「自分がブスだ」というもの。
 少女マンガだと、そう言いながら絵的に普通の美少女だったりするけれど、この作品では表情や肌荒れ…美容全般に対するヒロインの無関心さ加減が、素材としては悪くない顔を気持ち悪く見せている、というやり方で、割合容易に改善可能な「ブス」を創出。
 彼女が、一緒に暮らす四人の美少年達により、次第に美しく変身させられていく『マイ・フェア・レディ』的なストーリーになっていくのかな。

 全編ふざけていた『練馬大根ブラザーズ』では、逆に もう一つ弾け切らなかった感のあるナベシン監督のギャグセンスが、普通に少女マンガ風のストーリーに乗せていく事で どこまですっ飛べるのか、それを楽しみに、視聴継続。



『ときめきメモリアルOnly Love』01.「ときめきの出会い」

 かつて恋愛シミュレーションゲームの代名詞だったタイトルを、テレビアニメ化。
オンラインゲーム企画の進行に伴い、企画されたのだろう作品。

 転校生である男の子の視点で、一風変わった学園と、イベントを楽しむ生徒会・生徒、ヒロイン達を ざっと紹介した。
 主人公が獲物となり、学園内を追い回される構成は、なかなか上手い。
転校生に校内を案内してあげる、といったアリガチな構成より、アクティブであり、楽しげな雰囲気が演出できるから。
 ヒロインが そんなにまで好かれている理由も織り込めると良かったけど…余り欲張りすぎては散漫になるばかりだから、それは次回以降で構わないかな。

 自分より遙かに大きな人間を投げ飛ばす、デタラメな力を持ったヒヨコがおかしい。
これは、ゲームのマスコット・キャラ?
 女性キャラのデータを熟知している便利なクラスメートが、『ときメモ』っぽい。
 作画は良好だし、アクションに妙な力が入っていた事で、第一話は楽しく見られた。
 取りあえず、視聴継続。



『らぶドル』01.「らぶドルですか?」

 モーニング娘。辺りをモデルにしたのだろう、多人数アイドルユニットをヒロインに据えたアニメ。
 いきなり、ステージでユニットの先輩達が歌う様子を二曲連続で見せられ、驚く。
こういう始まり方なら、このボーカルの子が主人公でないと。
 いや、現在16人で更に増えそうな少女達全てがヒロインです、という『シスタープリンセス』風の扱いなのかな。
 一応は視点を代表している男性マネージャー、彼を主人公だと捉えて良い?

 少女達を、新人ユニットだけでも一気に四人出し、しかもその全員を漫然と描いているので、結局 見終わった時、誰一人印象に残らなかった。
 新規生に「足りない」と言われているのは何なのか。
マネージャーが街で出逢った「歌うのは復讐のため」というエキセントリックな少女の中に、それを埋められる何かがあるのか。
そういった興味で視聴者の心を掴もう、という狙いだろうけど、うーん…
 どうも途中から始まったアニメのように思え、新規ユニットに賭けるマネージャー・デビューを目指す新人達、それぞれの情熱が上手く伝わってこない。
そうなると、彼と彼女らの前に立ちはだかる壁に対しても、興味が薄くなってしまう。

 3話ぐらいまでは見続けようかと思うが、余程 化けない限り、そこまでに。



『ネギま!?』01.「序章1」

 以前アニメ化されたものの続編…ではなく、前作を「無かったこと」にして、また原作の最初からアニメ化。
 確かに、前作は「良い出来だった」と素直に言えない内容だったけれど、そう間を空けず、さして切り口を変えた訳でもないリスタート。
 こんなムチャが許されるのは、原作に強い魅力があっての事だろう。
さすがだなあ。

 前アニメと雰囲気を変えるため、最初からエヴァンジェリンを正面に立て、ネギと彼女の因縁・バトルを序盤のツカミにするつもりなのかな。
「恐ろしいヴァンパイア」然として描こうとしているけど…うーん、とうに正体を知っているからなのか、迫力も不気味さも足らず、コミカルなシーンとのギャップも上手く演出できていないように感じられ、いまひとつ。
 スタッフが被っているため、そこココから『ぱにぽに』っぽさが。
黒板に書いてある意味のない文字列ギャグとか、そのまんまだし。
 作画は、意識がないまま引き摺られていく明日菜の動きなど、良いところもあるが、全体に「ファンが大満足できる」程かどうか疑問。
前作と比べれば、安心して見られるレベルだけど。

 いや、これだけ見れば、ウダウダ文句を言うような悪い仕上がりではないのだが…原作既読な上、前のアニメも見ている身には、これなら もう一度見直していきたい!とまで思わせてくれるパワーが感じられなかった。
 しかし、原作ファンであり、前アニメに大きく不満があった視聴者を対象にした再アニメ化なのだから、そういう層が満足しているなら、成功だろう。
少なくとも、「原作無視上等」といった姿勢は、スタッフから感じられないので。


2006年10月4日 水曜日

『パンプキン・シザーズ』01.「不可視の9番」

 原作未読。
 架空戦後の動乱期を舞台にした作品。

 「武士道一直線」なメンタリティーを持つ少女は、割合に良く描かれる。
 『Fate』セイバーは「騎士道一直線」なキャラクター。
 そういう流れから(?)、「軍人魂一直線」少女が登場。
真っ直ぐで、弱き人々を守りたいという気概に溢れ、キリッとしたアリスは、なかなか魅力的な造形のヒロイン。

 終戦後の世界、元々は軍で特殊な部隊に所属していた男が、超絶の戦闘能力を発揮する…という基本設定から連想するのは、どうしても『ボトムズ』。
 普段は ぼんやりしているように見えながら、作戦行動に入ると凶暴さ・酷薄さを剥き出しにする性格付け。
 戦車を相手に、生身で完全な勝利を収める戦いぶりが壮絶。
…しかし、硫酸弾とはいえ砲弾を至近距離から受け、ロクな怪我もなく すぐ行動可能になる肉体は、どういう仕組み?
「鍛えた体は無敵」というような『北斗の拳』的理解か、戦闘用に改造されている・生まれつき特異な能力を持っている、といった設定があるのか。

 しばらくは混乱した世界で軍務を果たす小エピソードを重ね、いずれ突然訪れた停戦の理由について、迫っていく事になるのかな。
 期待できそうな内容。
視聴継続。



『金色のコルダ』01.「ありえないプレリュード」

 どういう作品かと思ったが、コーエーのゲームが原作だということで納得。
昔のコーエーは「武将萌え」ゲームばかりだったが、最近はもう一本、「美少年萌え」という柱が出来ているから。
 第一話は駆け足に、基本設定の紹介と、キャラクターの顔見せをした所までで終わった。

 破綻も嫌なところも無いが、強く心を引かれるところも また無い第一話。
ヒロインと美少年達との関わりは、スタッフ次第で面白く出来そうに思うけど…
 基本的に、女性向け「萌え」アニメは視聴しない事にしており、今期もまた放送本数過多で、視聴対象を絞り込ま「なければならない」状況下では やむを得ず、ここまでに。



『いぬかみっ!』26.最終話.「ヒカリっ!」

 放送は終了したのに感想を書いていなかったので。
 ラストバトル。
 悲惨な状況下、犬神達の期待を一身に背負った「ヒーロー」たるべき啓太が、幼児の姿にされたまま地下下水道を「助けてくれー」などと叫びつつ為す術なく流されていく、このギャップと情けなさに笑ってしまう。
 彼の明るさ・ポジティブさ・決して諦めない心が、犬神達の絶望を、希望に変えていく。
全員が心を一つにしての決戦は、大いに盛り上がった。

 なでしこ にのみ特殊な設定を付加し、超絶パワーを発揮するイベントまでわざわざ組みながら、決定打とはならず…どころか大して役に立った訳でさえない。
その設定についても、説明が分かったような分からないような…という段階で止まっており、何のため無理矢理気味にこんなイベントを組んだのか、疑問。
 原作にあるから、という事かも知れないが、消化しきれない設定については、無かったことにしてしまう選択もアリかと。

 度々出してくる、この作品独自のカラーともなった要素が「とにかく男の裸をやたらに出す」という、かなり異色なもの。
それも、耽美系で女性達が夢見る対象としてのホモではなく、マッチョの嫌な裸、股間を「象さん」アイコンで隠した主人公らの裸を、「笑いを取るための武器」として多用する形。
 美少女キャラも多数用意されている作品なのに、とにかく脱ぐのは男ばかり。
 甘い食べ物には、塩を振ることで かえって甘さを引き立てるやり方があるように、萎えてしまう嫌な野郎共の裸を入れることで、「萌え」を強調しようとした、とか?
まあ成功していたかどうかはともかく(笑)。

 彼ら「異形のモノ(易しく言うと、変態)」に対し、愛情が感じられる作品だった。
決戦においても、彼らが大きな力になったのだし。
 思えば、彼らは「人間でありながら、常識的にはあり得ない外見」をしており、犬神達は「美少女の姿をしながら、実のところ人間ではない」。
対局にある存在と言えるし、両者とも「異形」であるが故に、人よりもなお人の本質を表している、とも言える。

 アリガチな設定を用いつつ、あちこちに捻りを加え、バラエティーに富んだ内容にすることで、楽しいシリーズに出来ていた。
 多数出した犬神少女達を、それぞれ魅力的に描けていたのも結構。
…せんだん なんて、もっと面白く描けたキャラだろう、とは思うけど。
 ドコかへ消えてしまった川平薫を、彼の犬神達が探す旅を中心に、第二シーズンも行ける内容じゃなかろうか。


2006年10月3日 火曜日

『D.Gray-man』01.「アクマを狩る少年」

 原作既読。
 個性的であり、繊細な描画が大きな魅力となっている原作なので、アニメの絵作りには不安があったが…うん、悪くない。
原作の良さを、何とか生かそうとする努力が感じられる。

 ストーリーは ほぼそのままだから良いとして。
 演出面。
キャラ登場シーンやアクションにハッタリが足りず、若干 物足りない。
ちょっと分かり辛い部分がある原作の画面を、よく噛み砕いて伝えている、とは思うけど。
 千年伯爵の声を、滝口・ドクロベー・順平が演じているのが楽しい。
このキャスティングは思い付かなかったなあ。

 見続けるつもりだけど、先の方まで原作を読んでいることもあり、感想は書かない予定。



『となグラ!』13.最終話.「ベランダと紙ひこーき」

 「萌え」作品、ギャルゲー風味の作品では、どうしても男キャラのワガママ勝手や他者を傷つける行いが発生し、フクザツな気分にさせられるモノだけど…
 これはまた、限界を超えて人がイイ、ただひたすらヒロインの無理難題に応えようとするばかりの男の子。
勇治には「えっち」だという性格付けがあるので、他の女性キャラにチョッカイを出しはしたが、本気で好きになるような そぶりを見せる事はなく(それはヒロインも同じか)、「嫌い」とヒロインから言われるや、立ったまま気絶するような過度の一途さ・純情さも見せる。
 どこまでも男の子に尽くす少女キャラを「犬っぽい」と言い表す事があるけど、彼は正しく犬っぽい、忠犬そのままの性格付けだった。

 彼は最後まで変わらず…それはもう幼い頃から全く変わらず。
 ヒロインだけが、好き→風化する記憶の中で美化された彼が好き→理想化されすぎた姿と本当の彼のギャップに拒否反応→ようやく思い出した少年時代の彼とイメージを重ねられたため抵抗感が消える→好き、というような感情の変遷を辿っている。
 男の子側のみ忍耐を重ねていたようにも見えるけど、ヒロインに一方的な罪悪感を背負わせ、男の子が「そのままの自分」を受け入れてもらう、という意味では、やはり男性視聴者に気持ち良くなってもらうのが狙いの作品だったのかな。
 少女マンガっぽい方法論の構成だ、とも言える。

 前回、勇治は香月の身勝手な理想に応えようと、性的欲望を過剰なまでに抑制し、優等生たらんとして無理に無理を重ねていた。
この努力が、今回は全く影を潜めているのが不思議。
香月が「もういいよ」と言った訳でも、勇治本人が「辛いからやめる」と意思表明をした訳でもないと思うのに。
 限界が来たから、あるいは引っ越しまでのタイムリミットが迫っており「サービス期間終了」という割り切り方をしたから、かも知れないけど、せっかくの無理なんだから、空港での別れに至るまでフラストレーションを積み重ねさせた方が、えっち本性開放シーンを活かせたような。

 いずれはライバルキャラに育つかと思われた ちはや・小五郎が、あくまで「二人を応援する」立場を取り続けたのに物足りなさを感じつつ、関係が修羅場には発展しなかったため まったり見られた美点もあり、善し悪し。
 姉妹の枠を越えて妹を愛する初音、「狙撃」という歪んだ形のみ表に現れていたが、兄を見つめ続ける視線には愛情が込められていたのだろう まりえ、等々、サブキャラが魅力的に描かれた作品だった。

 視聴者誰もが予想できたろうオチも含み(この無責任な親の設定で「引っ越し」は強制イベントたり得ないよなあ)、構えず、気楽に見られる、可愛らしいアニメだった。



『ギャラクシーエンジェる〜ん』01.「出撃!天使のスクランブる〜ん」

 ギャラクシーエンジェル・サーガの、ニュー・ビギニング。
 前シリーズが、「笑い」のためキャラクターも設定も激しい勢いで食い尽くし、作品世界に破壊するモノが無くなってなお、体中の毛穴から血液を噴き出しつつ暴走を止めず、限界点を通り過ぎたところで粉々に砕け散る壮絶な最期を遂げたことで(嘘)、主要キャラを一新しての再開。
 実際…前シリーズのキャラ達は、もう行方不明になろうが死のうが神になろうが、「どうせ次回はケロッとして元の位置に戻ってるんでしょ」と視聴者に思われ、まるで驚かれないほど壊されてしまったため、ギャグを成立させるのが難しい…というか不可能だったから、この再スタートには納得。

 第一話は、何しろまだ新キャラクター達に馴染みが無い分、笑いに繋がり辛かった。
 ネタも、そんなに強力なものではないし。
「戦艦の何十倍もの大きさになるマゾ紳士」というゲストキャラを「強力じゃない」と言い表すのもナニだけど、新キャラ達の個性・世界観・ライトなタッチが、これまでのシリーズと そう変わっていないため、つい「前シリーズ並の凄い(破壊的な)刺激」を期待してしまい、それにしては内容に弾け方が足りないため、まあまあ、というような評価に落ち着いてしまう。

 せっかく仕切り直すのなら、こんな似た内容にせず、ヒロイン達に恋愛要素が絡んでくる「萌え」中心のコメディーにするとか、SF的アイディアを中心にしたスペース・アドベンチャーとして構成するとか、もっと思い切った改革をしても良かったような。
 同じくブロッコリーの『デ・ジ・キャラット』で、毒々ヒロインだったデジコを、お行儀の良い幼児向けキャラにしたり学園モノにした多方面展開が余り上手く行かなかった、その反省から基本路線を堅持しようとした?(いや、上手く行かなかったのかどうか知らないけど)

 ヒロイン達は可愛いのだし、特にドコが悪いという所も無く、ここからテンションが上がっていく事を期待して しばらく視聴。



『ライオン丸G』01.「2011 NEO歌舞伎町ライオン丸TRANSFORMED状態!」

 ずっと前、ライオン丸をリメイクする、しかも現代を舞台にして…という話だけは聞いたことがあった。
怪傑風雲と二作あるけど、ライオン丸って そんなにメジャーなヒーローでもないと思うし、しかも時代劇である事に価値があったような作品を無理矢理 現代劇に置き換えて、面白くできるのか…と、半信半疑、企画のみで終わるんじゃない?と思っていた。
 まさか本当に、しかも「こんな形」で甦らせるとは。

 オリジナルと、よくここまで、と思うぐらい変わっている。
 主人公はNEO歌舞伎町でもワースト・ワンに位置する、馬鹿・色ボケ・いい加減なホスト。
街を徘徊する暴力ジャンキー達を利用した保険金詐欺の対象にされた彼は、ホームレスの果心居士から渡された剣を抜く事で、ライオン丸に変身するのだ!
 うーん、凄い。
「パロディーとして『ライオン丸』のキーワードをアチコチに残しながら、どれだけ元設定を破壊できるか」に挑戦して、見事100点満点取ったような。
この発想は、なかなか出てこないぞ。

 主人公のヒーローっぽくなさが壮絶。
『シャンゼリオン』がマトモに見えるほど…いや、そうでもない、いい勝負かな(笑)?
 水商売お姉ちゃんの源氏名と、地域限定新聞を発行しているその妹の名を、サオリとコスKにするセンスが すっ飛んでいる。

 テイストは「ギャグ」で、主人公の店にやってきたダメ女性客と店長の やり取りや、女装したヤクザ(?)のボスが部下二人を鞭打ったり自分を鞭打たせたりといった、ストーリーとは何の関係もない部分に やたら時間を取っている。
…まあ、この辺りが笑えるかどうかは、個人の感性に寄りそうだけど。
 オリジナルで剣を抜き放つ時のキーだった「風よ、光よ…」という言葉を、完全には言い終わらないウチに抜いてしまう主人公、というシーンのいい加減さには笑ってしまう。

 タイトルが『ライオン丸』ではなく、例えば『歌舞伎町ホストマン』とかいうものであれば、最初の方で視聴を終えていたと思う。
 しかし、最後まで見てみれば、脱力ギャグも それはそれで楽しかったり。
 次回、ヒーロー・アクションが見られるのだろうから、その内容如何と、ギャグのノリが良くなっていくかどうか、そこいらが勝負だろうか。
 取りあえず、しばらく視聴。


2006年10月2日 月曜日

『桜蘭高校ホスト部』26.最終話.「これが俺たちの桜蘭祭」

 終わって少し経つが、感想を書き忘れていたので。
 最終回。
 遠く離れた所へ行ってしまおうとする友達(彼)を、仲間達が力を合わせ、懸命に追い掛けて引き留める…言ってしまえば「よくある話」なのに、料理の仕方では こんなに面白くなるものか、と、ひたすら感心。
 特に、馬車と車で展開するチェイス、宙を舞うハルヒを助けようとして環が見せる、一瞬を拡張したアクションシーンなど、演出と作画が抜群に素晴らしく、見入らせてしまうだけのパワーがあった。

 大金持ちの御曹司であり、かつ美形という、ムカッと来るほど恵まれた男子ばかりが登場する作品なのに、男性視聴者にも反感を感じさせなかったのは、基本的に男達が「アホ」だから。
アホと言っても、見下げられるようなアホではなく、何というか男同士で好意を込めて言う時の「馬鹿だなあ」と同じ意味で。
 環が、最も好かれたい相手であろうハルヒから、恋愛対象としては ほとんど相手にされていないのも結構。
ハルヒ自身、よく知る人間からは「美少女」と見られるが、本人の行動・意識は「美少年」そのものである、といった複雑な存在。
 女性向け作品で時折見られ、付いて行けないと感じるのは、どう見てもロクデナシの男がワガママ勝手をしているだけなのに、ヒロインが「あの人、優し過ぎるから」とか「とにかく、何が何でも好き」という態度を取り続ける事で現れる、理解を超えた愚かさ。
それは一面、「恋愛の真実」であろうけど…見ていて必ずしも楽しいものでなく。
 そういうマイナス点が(恋愛要素そのものが?)、この作品には無い。

 素直に、面白かったアニメ。
 完成度が高すぎ、またマニアックであったりオタクであったりする部分が少ないため、突っ込んだり勝手に笑ったり出来ず、つい感想を書きそびれてしまう。
それをして「物足りない」などと言うのは、オタクの歪んだ視点ゆえ(笑)。



『ひぐらしのなく頃に』26.最終話.「罪滅し編 其の伍 リテイク」

 今期最大の問題作も、遂に最終回。
 謎の全貌を明らかにするにはもっと話数が必要なので、まだまだ続くものかと思っていたが、そういった部分の解明は果たさない形での終幕。

 教室を占拠して剣呑な姿を見せるレナが楽しい。
これも…教育上 余り宜しくないので、地上波での放送は難しい内容だろうな。
このアニメにそんな事を言っても、今更だけど。
 猜疑心と狂気で満たされたレナを、いつも通りの無駄話で正気に返そうという圭一 必死の戦い。
重量がある大ナタを、金属バットで受け止めるのは なかなか難しそう。

 エピローグは、また別の分岐ストーリーに入ったという事?
いくら何でも、これだけの大事件を起こしておいてフツーに登校できるとは思えないから。

 結局、彼ら彼女らを狂わせていたのは、「物語を容易にグッドエンディングまで運ばせまいとする、製作者(神)の悪意・情熱・創意工夫」なのか。
 分岐を間違え、バッドエンドを繰り返しつつ、その経験を踏まえてハッピーな結末を目指そうとする、ゲーム・プレイヤーと登場人物達の立場・心情をシンクロさせたトリッキーな構成が面白い。
けど…分かり辛くもある。
 エピローグのナレーションで語られていたように、「仲間を信じ、相談する」という打開策だけでは解き明かせない謎がいくつも残された。
それは、ゲームを遊んでみることで解決して下さい、という事?

 全体に。
 いやあ、凄いアニメ。
今後、規制は厳しくなる可能性はあっても緩くなるとは余り考えられず、これ以上、過激で刺激的で勢い付き過ぎオーバーランした作品の製作は、難しいだろう。
 比較対象として「『ひぐらし…』の狂いっぷりに比べればまだまだ」などと長く語り続けられるだろう、何というか、やっぱり凄いとしか言い様がない作品。


2006年10月1日 日曜日

 コミケット代表の米澤嘉博さんが亡くなったと、掲示板で教えて頂く。
 前日、代表職を退くという発表をした事だけは聞き及んでいたが、そんなに悪かったとは…こんな急に亡くなられるとは思いもせず、ただ驚く。
 直接お目に掛かったのは、コミケ以外のイベントで一度ぐらい、しかもロクに話しをした訳でさえない。
それでもこれは、ショックだった。

 長くコミケに参加しながら、自分は、米澤代表らが苦労を重ねて切り開いた道を、後から楽々と通り、荒れ地を開墾して怪我をしないよう整備してくれた庭で、何も考えず遊んでいたようなもの。
先輩に甘えっぱなしの、ダメな後輩。
 この方が居なければ、コミックマーケットは現在まで存続していたかどうか分からず、日本の同人誌文化も ここまで隆盛を極めていたか、疑問。
プロデビューの前段階として「同人」という場が機能してなかったなら、道を目指すのが遅れた・諦めた作家さんも、大勢居ると思う。
 その存在が どれほど大きなものだったか…もっと時間が経ってからでなければ、把握しきれないだろう。

 お疲れ様でした。
 ありがとうございました。
 心より、哀悼の意を表します。



『うたわれるもの』26.最終話.「うたわれるもの」

 ここ数話を、まとめて最後まで鑑賞。
 巨大ロボット・アブ・カムゥが余りにも強く、装甲や起動時間、燃料補給に操縦者への負担など、弱点となるべき設定が見当たらないことで、戦いがかなり不合理なモノに。
どこかに一つでも弱い部分を作ってあれば、そこを突く戦略が考えられたろうに。
…このロボットとの戦いは、逆襲するためにハクオロが怒りとパワーを開放し巨大化するイベントのためにあり、「何とか攻略可能」にしては意味を成さないんだろうけど。
 それにしては、敵国に攻め込むやロボット兵が、ザコ敵のようにポコポコ倒されていたような。
 戦力がインフレ化してしまったため、対人戦闘・戦略戦術の面白さが発揮できなくなり、そこにも魅力があった作品なので、ちょっと物足りなく感じる。

 ハクオロ魔獣のデザイン。
うーむ、これは憧れない。
もうちょっと格好良く恐ろしい姿にも描けたと思うが…まあそれだけに、「常識が通用しそうもない異形のモノ」には見えたけど。
 彼が魔獣に変身できたのは、仮面のお陰?
それとも元々ああいう姿なのを仮面で抑えていたのか。
 最後の方は凄く駆け足で説明が行われたため、真相を受け取り損ねた部分が多々。
特にハクオロ周辺の事情。
彼とディーの宿縁について、言葉では語られたが、こんなにも特殊な設定についてサラッと流されては、理解が追いつかない。
エルルゥとの関係にしても、こうかな?と思う程度には描けていたけど、大事な所なので、もう少し丁寧にやって欲しかった。

 個人的には、ハクオロの正体について さほど深い興味を抱いておらず、それよりは、仮面の上に成り立っている多くのキャラクター達による関係性に面白さを見出していたため、その繋がりを断ち切る真相については、「邪魔」「無くても良い」と感じてしまう。
 巨大魔獣化さえ除けば、ハクオロは別段、王位継承権争いで国を追われたどこぞの王子でした、というぐらいの正体で構わなかったはず。

 いや、この設定と、そこから生まれる必然性による仲間達との哀しい別れが、スタッフの描きたいことだったんだろうから、それを否定してはイケナイと思うんだけど。
 魔獣ハクオロに怯えることなく「お父さん」と泣きじゃくるアルルゥや、初めて自分の気持ちを強く口にするエルルゥ(自ら発した「好き」という言葉に一瞬戸惑う、細やかな演出が素晴らしい)の様子が涙腺に来た分、理不尽な運命(設定)に文句を付けたくなってしまって。
 それだけキャラクターが魅力的に描けていた、という事であり、製作者がキャラに寄せる愛情が見事 実を結んだ成果だとも言える。

 全体に。
 しつこいようだけど、登場キャラ全てが個性的で、敵にすら面白味を感じられるように造形してあるのが、驚異的な作品。
 その一人一人に対するスタッフの理解も的確。
大抵の作品では「コイツはこんな事しないだろう、物語の都合だけで動かしているな」と思わせられる部分があるものだが、このアニメに関しては、そういう記憶がない。
アルルゥは、是非 家に引き取りたいキャラ(笑)。
 戦いが続いていく状況の緊張感を保ちつつ、しかし明るさや希望を失わせなかったドラマ作りも嬉しい。
 安易にキャラを殺さなかった選択が、後味を非常に良くしている。
……エピローグでのユズハの扱いだけは、「えーーーー」と言ってしまったが…これは仕方ないのかな。

 崩れない作画、CGを用いて大軍勢の移動を表すなど野心的な絵作りも楽しかった。
 手を抜かず、真面目に、一生懸命作られた良作。
 見せて頂けたことを、スタッフに感謝したい。
お疲れ様でした、次回作にも期待しています。



 映画『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』を見る。
 監督・小中和哉、脚本・長谷川圭一、という『ウルトラマンティガ&ウルトラマンダイナ 光の星の戦士たち』『ウルトラマンティガ・ウルトラマンダイナ&ウルトラマンガイア 超時空の大決戦』『ULTRAMAN』等で、多くウルトラ映画に関わってきたスタッフによる。

 『メビウス』は、テレビシリーズが好調であり、この映画版も評判が良かったことで、期待して見に行ったが…
 ああ、ダメだ。
これはダメだ。
全然ダメだ。
 泣けて泣けて、スクリーンが滲んでダメだ。

 ウルトラ6兄弟が縦横無尽の大活躍を見せ、しかしそれが あくまでメビウスの戦いをサポートする見せ方である事により、主題を見失わず、オールドファンから小さい子供まで満足できる構成になっている。
 どちらかをヒイキしても、軽く扱っても、感心しない内容になってしまったろう。
見事なバランス感覚。

 マン・セブン・帰ってきた・A、それぞれを演じた俳優さん達が一堂に会するシーンでは、「さすがに歳を取った」と、「まだこんなに元気なんだ」という思いが混ざり合い、問答無用で泣けてしまう。
 リーダーらしさを発揮するハヤタ、まだまだ熱血・無鉄砲気味で飛び出したがる星司など、キャラクターの捉え方も確か。
 悪の宇宙人側にしても、初めて見る子供達はそれなりに、よく知る大人なら「アイツが、しかもこういう攻撃で来たか!」と楽しめるようになっている。
 事前情報ほぼナシで行ったため、登場宇宙人は劇場で初めて見たのだが、全て名前が分かった事に我ながら驚く。
テンペラー星人なんて、普段 思い出しもしない宇宙人なのに…意外と魂に刻まれてるんだなあ。

 ドラマをしっかり描きつつ、クライマックスでは相当な長さ・密度の巨大バトルが展開され、そういう点でも満足度は高い。
「何分間戦ってるんだ?」というツッコミはあるけど、まあまあ、細かい事。
 CGを多用する空中戦は、板野一郎の才能が十全に活かされ、猛スピードで熾烈でパワフル。
余りに格好良すぎて、こうなると逆に、着ぐるみをワイヤーで吊す事に寄る画面も「あれはあれで質感があって良かった」などと言ってみたくなるのは、ヒネくれて古い感性の年寄りの、困った所。

 この映画を貫く軸になる「傷付いた少年の心」が きちんと描かれており、同じ子供の観客にとっては感情移入しやすく、大人にとっては手を差し伸べてあげたい気分にさせてくれる役割を果たしている。
 ヒロイン・ジングウジ アヤは…正直、居なくても差し障りないキャラだったと思うが、可愛らしく、気持ちの良い女性に出来ているので、問題なし。
「ミライの初恋相手になる」という展開も考えられたろうけど、詰め込みすぎは禁物か。
 テレビでは、その成長ドラマを描く事がテーマになっているGUYSの他メンバー達が、ほとんど蚊帳の外扱いになっていて残念…しかし、彼らまで大きく扱っては6兄弟に割く時間が削られてしまうため、良い判断だったと思う。

 こんなに幸せな気分で劇場を後に出来る事は珍しい。
 スタッフの強い思い入れを感じさせてくれながら、「プロの仕事」として高い完成度を達成した、子供も大人もウルトラファンも そうでない人も見て良い、見て欲しい、見るべき映画。

 以下、ネタバレの雑感。
未見の方は御注意。




 ヤプールは、地球人に対する怨念の塊と化しており、ほとんど『帝都物語』の加藤。
継続して上手く育てれば、何だか友好種族のようになってしまったバルタン星人(それはそれで悪くないが)に代わり、ウルトラ兄弟 最強最悪の敵として、ずっと先のシリーズまで使えそう。
 ただヤプール、もうちょっと知的な攻撃も見せて欲しい所。
無計画・力任せに押して来るだけでは、少々魅力に欠ける。

 この映画 最大の不満は、やはり東光太郎・篠田三郎が出演していない事だろう(理由はここに)。
彼だけは故郷に残り、教官としてメビウスら後進の育成に当たっていた、という事で、劇中の理屈も通ってはいるが。
 失礼な話だけど…もう役者さん全員を揃えられるタイムリミットは迫っていると思え、この作品が貴重なその機会だったと思うにつけ、残念でならない。
 テレビシリーズで、あるいは もう一本、この続編としての映画を企画してでも、勢揃いを期待したい。

 テンペラー星人のオリジナル・エピソードで、兄達に厳しく(いや甘いけど)見守られたタロウとしては、メビウスの危機に飛び出していくウルトラマンらの姿を どう捉えていたのだろうか。
「ヒイキじゃないか、兄さん」とか(笑)。
 メビウスは余り甘えた所がないルーキーだし、勿論タロウも今は大きく成長している訳だから、そういうコダワリは無いだろうけど。

 ゾフィーやタロウ…地球に残された兄弟達を早く助けに来て上げれば良かったのに。
行方はある程度分かっていたはずだし、ウルトラ・エネルギーは補充できるみたいだし(一時的なもので、恒常的にウルトラ種族に戻す事は不可能?)。
ヤプールの封印にしても、ウルトラ戦士達が交代で保つ事は出来そうで。
 ただ、彼らの地球での楽しそうな姿を見ると、これは「放って置かれた」というより、「嬉しい休暇をもらえた」に近いのかな。
遙かな寿命を持つ彼らには、人間として過ごした期間なんて、一瞬の事なんだろうし。

 少年・ジングウジ タカトが負った心の傷。
それは、怪獣と勇敢に戦うGUYSに憧れながら、実際に怪獣と遭遇した際、恐ろしさに動けず、飼い犬を助けに行く事さえ出来ないまま見捨てる形になった体験による。
 見た誰も思うだろうが、こんなのは臆病でも何でもない。
恐ろしい怪獣相手に、身がすくんで当然。
 この子の親の立場からすれば、「飛び出さないでくれて、良かった」と感じるはず。
奇跡的に助かりはしたものの飼い犬は怪獣による落石にあい、危うく命を落としかけており、少年が犬の元に駆け寄っていれば…どうなっていたか分からないのだから。
 しかし、少年の心の傷は、「誰かから許してもらえなかった」せいではなく、「自分で自分が許せなかった」事が原因。
 そう感じられる心の真っ直ぐさがあれば、いずれ正しく成長し、本当に勇気を発揮できる大人になれるだろう。
 などと考えつつ、ほろほろと涙。

 ウルトラ五つの誓いは、「腹ペコのまま学校に行かぬこと・天気のいい日にふとんを干すこと・道を歩くときには車に気をつけること・他人の力を頼りにしないこと・土の上を裸足で走りまわって遊ぶこと」。
なんでこんな緩んだ内容なのか、もっと「勇気を持って悪と戦うこと」というようなウルトラ戦士っぽい項目がありそうなもんだ、と思っていた。
 だが現代では、何を「悪」とするのか、決めるのが大変に難しい。
 子供を無慈悲に殺す異常者も居る事から、体力的にとても敵わない相手と「戦う」心を持てば、勇気が育つ前に命さえ危ない。
 だから、五つの誓いが表しているのは、健康で、健全な大人になって欲しいという願い、それだけ。

 地球を愛し、そのために迷わずウルトラ種族である力を捨て、喜んで人類と共に暮らすウルトラ兄弟達。
 自分達は、彼らのその想いに、応えられる大人になっているだろうか。
地球人は、そんなにまで愛してもらえる生命たり得ているだろうか。
五つの誓いを守る先にあったはずの、あの頃の未来に、僕等は立っているのだろうか。
 凄く久しぶりで、そんな事を考えさせられる映画だった。


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